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総合の短編ランキング

2万文字未満かつ完結済の作品を直近7日間のデータで集計しています。
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    彼女である幼馴染の寝取られ動画が送られてきて絶望していたのだが、間男である親友の腰振り音がモールス信号になっていることに気付いて動画を見直してみると貞操の危機であることが発覚して心が今すぐ死にそうです

    『あっ♡ ああっ♡ あーんあああん♡ あっあっ♡ あんんっ♡ 気持ちいいよぉ♡』   なんなんだ、これは。  とある土曜日。画面の向こうで行われてる行為に目を奪われながら、俺こと初小岩実は驚愕していた。 「これ、路夏だよな……間違いなく……」  朝届いた一本のDVD。差出人は不明だったが、今人気の作品のパッケージだったのでとりあえずリビングの再生機器で見てみると、そこには俺の幼馴染にして彼女である、瀬谷路夏の姿があったのだ。 『へへっ、どうだ路夏? 俺のほうが、実のやつよりずっと気持ちいいだろ?』  いや、それだけじゃない。路夏を抱きながら熱烈な口付けを交わす男にも見覚えがある。  宇場津太郎。俺のもうひとりの幼馴染にして、親友であるはずの男が、画面の向こうで俺を蔑みつつ、裸で俺の恋人を抱きしめていた。 『あーっ♡ あ♡ あっっ♡ あー♡ 津太郎くんのほうが、実よりずっとすごいよ♡ あっあっあっ♡ ああーん♡ ああっ♡ ねぇ、だからもっとぉ♡』  本来なら拒絶しなければいけないはずなのに、大きな喘ぎ声を何度もあげて興奮の渦に浸る路夏。  路夏の瞳にはハートマークが浮かんでおり、そこには俺など映っていない。  俺の恋人はもはや、親友だと思っていた男に陥落しきっている。  それが分かってしまった。同時に理解する。  俺は恋人を寝取られたのだ。それも、長年の親友に。  俺は恋人に裏切られたのだ。長年の幼馴染で、初恋の相手に。 『へへへっ、おい見てるか実? 路夏はお前より、俺のことを選んだみたいだぜ? 俺はお前のことが、ずっと嫌いだったんだ。俺の路夏を取りやがってよぉっ! お前から路夏を奪えて清々したぜ! ざまあみやがれ!』 「あ、ああああ……」  全身が震える。絶望が襲いかかる。  これが、これが寝取られ。これが、恋人を奪われるということなのか。  脳が破壊される感覚で、心が壊れそうになる。もうこれ以上、あの動画を見ていることなんて出来ない。 「うわああああああああああああ!!!!!」  俺の心はこの瞬間、粉々に砕けてしまった。きっともう、二度と立ち直ることは出来ないだろう。  激しい絶望感に襲われ、画面から目を離しうずくまる。  目からはとめどなく涙が溢れてくるが、動画は再生したままのため、耳には路夏の喘ぎ声と津太郎が腰を振ったことにより生まれたパンパンという音が断続的に飛び込んでくる。   地獄か、ここは。  パンッ、パパン、パパッパンパン 「うぅ……ぐすっ……」  パッパッパパン、パンパンパッパ 「ひぐっ……ん?」  そうしてしばらく泣き続けていると、ふと俺はあることに気付く。  パパパパ、パパパッパーン、パッツーン 「津太郎の腰振りの音……なんだかリズミカルじゃないな……不規則というか、違和感があるような……」  そう、普通なら腰を振った際にはもっと一定のリズムが刻まれるはず。  単純に津太郎が下手くそという可能性も高いし実際下手くそなのだが、どうもそれだけには思えない。  一度浮かんだ疑問はやがて、俺を真実へと導いた。 「もしやこれは……モールス信号か!?」    
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    嘘告した三人の女神を振ったら、本気の恋をされました

    クラスでは目立たない陰キャ男子高校生、黒瀬蓮。 彼の通う学校には、誰もが憧れる三人の「女神」がいる。 清楚で優しい一ノ瀬美月。 明るく社交的な天宮莉奈。 クールで知的な神崎紗雪。 三人とは無縁の高校生活を送っていた蓮だったが、ある日の放課後、偶然にも教室の外から彼女たちと陽キャグループの会話を聞いてしまう。 「ゲームに負けた奴が黒瀬に告白する」 それは蓮を笑いものにするための嘘告ゲームだった。 一ヶ月だけ恋人のふりをして、最後には「全部罰ゲームだった」と明かす。 そしてゲームの結果、一ノ瀬美月が蓮に告白することになる。 しかし蓮は、すべてを知った上で彼女の告白を冷静に断った。 「……ごめん。無理」 嘘告だったことを知られた三人は、蓮から告げられる。 「人を馬鹿にして楽しむような人間とは、もう関わる気がない」 その言葉に、三人は深く後悔する。 だが、ここからが本当の始まりだった。 蓮と距離を置く中で、三人は次第に彼への気持ちが「罪悪感」ではないことに気づいていく。 そして今度は、罰ゲームでも嘘でもない。 自分自身の本当の気持ちとして、蓮に恋をする。 三人それぞれが蓮との時間を重ね、彼もまた少しずつ彼女たちの本当の姿を知っていく。 しかし、蓮が最後に選べるのは一人だけ。 一度は嘘で傷つけられた少年が、最後に選ぶ「本物の恋」は誰なのか――。 嘘告から始まった最悪の出会い。 それでも俺たちは、最後に本当の恋を見つけた。
  4. 12

    彼氏の花屋に500万円出したのに、店名にあったのはまさかの彼と親友の名前でした

     花屋の開店準備のため、私は恋人の桐生悠真と親友の白石美羽と一緒に什器を選びに出かけた。その途中、美羽の指に木のささくれが刺さり、ほんの少し血がにじんだだけなのに、悠真は顔色を変えて彼女の手を取った。 「杏奈、絆創膏を買ってきてくれない? 美羽、痛いの苦手だから」  私は近くのドラッグストアまで走り、ようやく絆創膏を買って戻った。ところが外はすでに土砂降りで、悠真と美羽の姿はどこにもなかった。  すぐにスマートフォンが震えた。 「雨もひどいし、美羽の指も念のため診てもらったほうがいいから、先にクリニックへ行く。杏奈はタクシーで帰ってきて」  びしょ濡れのまま三時間以上待ち、ようやくタクシーを捕まえて店へ戻った。  ドアを開けると、悠真はドライヤーを手に、美羽の濡れた髪を乾かしていた。二人は寄り添うように並び、店にどんな薔薇を置くか楽しそうに話している。  ずぶ濡れの私を見ても、悠真は眉をひそめただけだった。 「鍋に牛乳があるから、自分で温めて飲めば?」  とっくに冷めきった牛乳を見つめた瞬間、何もかもがどうでもよくなった。  私はスマートフォンを取り出し、長い間こちらから連絡することのなかった父へメッセージを送った。 「お父さん、決めた」 「戻る。東雲ホールディングスの話、受けるよ」
  5. 書籍化作品2026年8月25日発売

  6. 17

    婚約者は愛しの妹を庇い、燃え盛る炎の中で私は完全に見捨てられた

    七月七日。私は三年間付き合っている恋人の桐谷拓海と一緒に、大学時代、学生寮で同室だった森川奈緒の結婚式に出席していた。  ブーケトスの時間になると、司会者が「今日は男女問わず、未婚の方ならどなたでも参加できます」と笑って声をかけた。友人たちに押し出された拓海も輪の中に入り、偶然ブーケを受け取った。  周囲から歓声が上がり、みんなの視線が一斉に私へ向いた。私も、拓海がそのままブーケを渡してくれるのだと思っていた。  ところが彼は私の前まで来ると、リボンをほどき、ひとつだったブーケを二つに分けた。  先に差し出した相手は、妹の佐伯美羽だった。  残った半分が、ようやく私の手に渡った。  美羽は二つの花束を見比べ、大きさがほとんど同じだと確認してから満足そうに笑った。 「これならいいかな」  拓海も笑う。 「お姉ちゃんにあげるもので、美羽の分がなかったことなんてないだろ?」  私は半分になったブーケを見つめた。さっきまで感じていた期待は、もうどこにも残っていなかった。  昔から、美羽が欲しがれば私は譲ることになっていた。部屋も、ペットも、進学の予定さえ同じだった。  今では、私の恋人までそれを当然だと思っている。 「美羽は小さい頃に迷子になったことがあるから、置いていかれるのが怖いんだよ。真帆はお姉ちゃんなんだから、それくらい譲ってやって」  私は手の中の半分のブーケを見下ろした。  でもこれは最初から、全部私に渡されるはずだったものだ。  もう、譲りたくなかった。
  7. 19

    幼馴染と成人式で再会したけど、昔言われた「嫌い」を十年間真に受けていたら、タイムカプセルから「好き」が出てきた。

     小学四年生の夏祭り。  幼馴染の小暮琴葉から、三枝直哉は言われた。 「私、直哉なんて嫌いだから!」  本人が嫌いだと言うのなら、それを信じるしかない。  そう思った直哉は、それまでのように自分から琴葉を誘うことをやめた。  それでも喧嘩をしたわけではない。  話しかけられれば普通に話すし、琴葉が困っていれば助ける。  ただ、それまでより少しだけ距離を置いただけだった。  そして中学、高校と進むうちに、二人はいつしかほとんど話さなくなった。  それから十年。  二十歳になった直哉は、成人式で琴葉と再会する。  昔とは違う姿。  知らない大学生活。  何年も途切れていた会話。  それなのに、笑い方や昔の癖だけは変わっていなかった。  久しぶりに言葉を交わすうち、二人の間には少しずつ昔の空気が戻っていく。  そして成人式の同窓会で、かつて小学校の校庭に埋めたタイムカプセルの話が持ち上がる。  二十歳になった自分へ、十二歳の自分たちが残した手紙。  直哉は、その中に何を書いたのかほとんど覚えていない。  琴葉もまた、「全然覚えていない」と言った。  ただ、その答えは少しだけ早かった。  十年前に離れてしまった幼馴染二人が、二十歳になってもう一度向き合う再会ラブコメ。
  8. 20

    弁護士の夫は幼なじみの母親の10円のために奔走したのに、私の母が命を奪われた事件は「受ける価値がない」と切り捨てた

    母の命日、私は企業法務セミナー後の懇親会に出席していた。  グラスを手にした男が近づいてきて、どこか面白がるように尋ねた。 「高瀬先生、今でも黒川先生のことを恨んでるんですか? お母様の事故の時、依頼を断られたでしょう」  私はシャンパンを一口飲んだ。 「もう昔のことです。黒川先生は大企業の法務とクロスボーダーM&Aしか扱わない。それが彼の方針ですから」  男は小さくため息をついた。 「でも、今は相当後悔してるみたいですよ。あなたが戻ってくれるなら、家も貯金も全部渡していいって」  私はバッグからアイボリーの招待状を取り出した。 「それは残念ですね」 「来月、私、結婚するんです。黒川先生もお時間があればぜひ」  言い終わった瞬間、横から伸びた手が招待状を奪った。  紙が真っ二つに破かれる。  黒川恭介が、血走った目で私を見ていた。  私は一度だけ彼を見て、すぐに視線を外した。  もう、何も感じなかった。  何年も前、母は横断歩道を渡っている最中、酒を飲んだまま運転していた大企業創業家の息子にはねられた。事故のあと、相手は同乗していた知人を運転手に仕立てようとした。  病院へ駆けつけた時、母はもう息をしていなかった。私は残された資料をかき集め、最後の望みをかけて恭介のもとへ行った。  彼は書類を数枚めくっただけだった。 「交通事故は専門外だ」 「俺は企業法務をやってる。扱う案件にも方針がある。別の弁護士を探してくれ」  母の葬儀も、その後の手続きも、私は一人で片づけた。  それでもずっと、自分に言い聞かせていた。恭介はただ、自分のルールを守っただけなのだと。  ところが二年後。  彼は白石夏希の母親のために、商店街の店を一軒ずつ回り、防犯カメラ映像の保存と提供を頼んでいた。  夏希の母親は、店で十円の値引きをめぐって口論になり、相手に押されて転倒し、手首を痛めただけだった。それでも恭介は警察署まで付き添い、診断書や損害賠償の資料まで自分で整えた。  その時、初めて分かった。  彼のルールは、破れないものではなかった。
  9. 21

    妻が俺の三千万円の成功報酬で大学生インターンにマイバッハを買った。その後、法廷に立った妻は泣くことすらできなかった

     妻の神谷美咲が経営する会社に、二十二歳の大学生インターンが入ってきた。  三浦悠斗。大学四年生で、卒業を控えた長期インターンだった。入ってまだ一か月も経たないうちに、美咲は「プロジェクト用の社用車」という名目で、彼にメルセデス・マイバッハを与えた。  その一方で、俺が半年かけてチームを率い、澄浜市最大級の複合商業施設案件を受注したことで支給されるはずだった三千万円の成功報酬は、一円も振り込まれていなかった。  美咲に確認すると、返ってきたのはあっさりした答えだった。 「今、会社の資金繰りがちょっと厳しいの」 「あなたの報酬は少し待って。ゲートスクエアの入金があればすぐ払うから」  そして、当然のように続けた。 「私たち、もう何年夫婦やってると思ってるの? そこまできっちり分けなくてもいいでしょう?」  その日の午後、経理に立ち寄った俺は、一枚の支払申請書を見つけた。  金額は三千万円。  メルセデス・マイバッハの購入費用。  使用者は三浦悠斗。  承認者は神谷美咲。  俺はその書類を持って社長室へ向かった。  悠斗は美咲のデスクの脇に立ち、楽しそうに話していた。俺が書類を置くと、先に笑ったのは悠斗だった。 「佐伯さん、まさか社用車一台で怒ってるんですか?」 「そんなに気にすることです?」  俺は美咲を見た。  彼女は眉を寄せただけだった。 「直人、細かいことで騒がないで」  その瞬間、言い争う気がなくなった。  八年間、俺はこの会社で数え切れないほどの後始末をしてきた。  なら、一度くらい見てみてもいい。  俺が手を離したあと、美咲と彼女が選んだ新しい責任者だけで、この会社がどこまでやれるのか。
  10. 23

    離婚した途端、元夫の幸運が尽きた

     離婚届の隣に、結婚相談所から取り寄せた男たちのプロフィールが四通並んでいた。  秘書が置き間違えたのだと思い、どけようとした瞬間、相馬怜司がその上に手を置いた。 「先に見てみろ」  私は顔を上げた。 「どういう意味?」  怜司は一番上のプロフィールを開いた。 「三十二歳。大学病院勤務の外科医。初婚。条件も悪くない」 「気に入らなければ、あと三人いる」  私はしばらく彼の顔を見つめた。 「もしかして、私の再婚相手を探してるの?」 「そうだ」  怜司はためらいもせず答えると、すでに署名済みの離婚届の横へ万年筆を置いた。 「離婚したあとも生活は続く。候補は俺が一度確認してあるから、お前はこの中から選べばいい」 「気に入った相手がいたら秘書に伝えろ。そのあとはこっちで手配する」  言葉が出なかった。  八年間の結婚生活をいつ終わらせるか決めたのも彼だった。そして今度は、離婚したあと誰と人生を始めるかまで決めようとしている。  そのとき、ドアがノックされた。 「相馬社長、白石さんがお見えです」  秘書の言葉を聞いた怜司は、すぐに立ち上がった。  私は呼び止めず、八年間つけ続けてきた結婚指輪に目を落とした。細かな傷が増え、縁の光沢もすっかり薄れている。  昔、祖母に言われたことがある。 「誰かのために何でもしてあげているとね、その人はいつか、それが最初から自分のものだったと勘違いするようになるよ」  あの頃は、ただの年寄りの小言だと思っていた。  今なら、少しだけ意味が分かる。
  11. 26

    プロゲーマーおじさん、ダンジョン配信でも1秒に16連撃を決めてしまいバズってしまう

    十年前にダンジョンが出現し、ダンジョン配信が当たり前となった世界でおじさんは会社員をする傍らプロゲーマーとしても活動していた。 ある日、勤めていた会社が倒産したことにより、おじさんは専業プロゲーマーになってしまう。 プロゲーマーの収入で生きていけるだけのお金を稼いでいたおじさんにとって会社勤めは暇つぶしとゲームの息抜きとしていたので、日中が虚無の時間になってしまった。 暇になったおじさんは最近流行りのダンジョン配信でもやるかと思い立ち、ダンジョンでモンスターを倒し攻略する日々を送ることになる。 暇が高じて、ゲームで使っている技をダンジョン内で再現できないか試行錯誤した結果、おじさんは一秒間に十六連撃できるように……。 超絶技巧を身につけたおじさんだったが、おじさんということで人気は出ず、細々とダンジョン配信を続けながらプロゲーマーとして活躍する生活を送っていたが、超人気美少女ダンジョン配信者の窮地を救ったことをきっかけに超絶技巧が人々の目に触れてバズってしまう。 これは暇つぶしにダンジョン配信を始めたプロゲーマーのおじさんがダンジョンで無双してしまう物語。 ※AI補助利用は誤字脱字の指摘のみになります。
  12. 41

    夫は会社にお金がないと言って母を助けられなかったのに、愛人の娘に八百万も貯めていた

     母の容体が急変した。残された治療法は保険適用外の先進医療で、高額療養費制度の対象外だった。自治体の助成制度も調べたが、申請から承認までに時間がかかり、母の状態はそれを待てなかった。結局、あと三百万円を自己負担で用意するしかなかった。  私は泣きながら、結婚して五年になる夫――神谷遼介に頼んだ。遼介はITベンチャーを経営していたが、その頃は会社の資金繰りが厳しいと何度も口にしていた。 「美月、ごめん。会社が今かなり厳しいんだ。本当に金がない」  私は信じた。  昼はフードデリバリー、夜は食品工場の夜勤に入り、借りられるところからは頭を下げて金を借りた。ただ母を助けたかった。  けれど、母は間に合わなかった。  母が亡くなった日、私は葬儀社へ死亡診断書を届ける途中で、遼介の会社の前を通りかかった。そこで、オフィスのドア越しに、二歳年上の従姉――藤原理奈の声を聞いた。  続いて、遼介の低い声がした。 「花音の教育資金なら、八百万円は別に取ってある」 「足りなくなったら、また言ってくれ」  私はその場に立ち尽くした。  手の中で、母の死亡診断書がゆっくりと皺になっていった。  遼介に金がなかったわけではない。  ただ、私の母の命に、その金を使う気がなかっただけだった。
  13. 49

    明日、婚約破棄される私が今夜やるべきたった一つのこと

    七年間、王太子の政務を影で支えてきた公爵令嬢アリーゼ。けれど婚約破棄の前夜、彼女は気づいてしまう。自分が作った政策も、外交文書も、予算案も――そのすべてに残っているのは殿下の名だけ。私の名前は、どこにもない。 そこで彼女が今夜やるべきと決めた、たった一つのこと。それは逃亡でも復讐でもなく、王家に与えてきた《魔力保証》を、すべて引き上げることだった。 翌日、主役のいない断罪劇の裏で、王国は静かに崩れ始める。止まる外交協定。空白になる予算。露見する殿下の浪費。誰も、彼女が何をしていたのかを知らなかった。 一方その頃、北の辺境では。「戦場の狼」と呼ばれる大公が、行き倒れた彼女の才能を見出し、報酬と休日と権限を記した一枚の契約書を差し出していた。 「君の仕事には価値がある。だからこそ、正当な対価を払わせてほしい」 手を離しただけで自滅する国。生まれて初めて差し出された、正当な評価。私が取り戻すべきものは、殿下ではない。私自身だ。 冤罪、婚約破棄、そして全自動ざまぁ。役に立つことでしか自分を測れなかった令嬢が、自分の人生と功績を取り戻す物語。ハッピーエンド。
  14. 54

    交際7年目にして発覚した、彼氏の「やりたいことリスト」のヒロインが私じゃなかった件。

    神谷蓮司は、誰もが認める理想の彼氏だった。  背が高く、仕事も安定していて、人当たりも穏やかで優しい。周囲の同僚からは、大学時代にこんな男と出会って、そのまま七年も付き合っているなんて運がいいと言われていた。私自身も、ずっとそう思っていた。  あの日、体調が悪くて仕事を早退し、朝凪市にある私たちのマンションへ帰るまでは。  リビングに蓮司の姿はなかったが、ノートパソコンは開いたままだった。画面には共有ドキュメントが表示され、内容が自動更新されている。閉じておこうと手を伸ばした私は、そのタイトルを見た瞬間、動きを止めた。  【さなと叶える五十の恋愛リスト】  私の名前は、佐伯紗奈。  読み方は「さな」だ。  第一項――さなと一緒に猫を飼う【達成済み】  第十二項――さなと夕日の中でロマンチックなキスをする【達成済み】  第三十九項――貯金して、さなの欲しがっている車をプレゼントする【進行中】  最初は何も疑わなかった。蓮司がこっそり私たちのために作っているリストなのだとさえ思った。けれど、読み進めるうちに違和感が膨らんでいった。  そこに書かれている出来事の多くを、私は知らなかったからだ。  そのとき、画面がもう一度更新された。  最下部に、五十番目の項目が現れる。  【愛は沙菜に。帰る場所は紗奈に。】  私は二つの名前を見つめたまま、凍りついたように動けなくなった。  紗奈。  沙菜。  どちらも読み方は「さな」。  けれど、一人は私で、もう一人は水城沙菜だった。  神谷蓮司は、一度だって名前を書き間違えてはいなかった。  最初から間違えていたのは、私のほうだった。
  15. 56

    7年間尽くして夫を弁護士にしたのに、私が襲われた時彼が助けたのは初恋の女だった

     神谷直人が法科大学院を卒業し、司法試験に集中できるように、私は駅前のガールズバーで三年間、夜のシフトに入り続けた。  その後、直人は司法試験に合格し、司法修習を終えて弁護士登録をした。今では汐浜市にあるそれなりに規模の大きい総合法律事務所に勤め、企業法務や民事事件を中心に扱っている。地元でも少しずつ名前を知られるようになっていた。  私はとっくにガールズバーを辞め、汐浜駅東口にあるワインバーで働いていた。接客だけでなく、酒類の仕入れや取引先との調整、ワインの販売まで任されている。  あの夜、常連客の一人が酔った勢いで、私を倉庫へ続く従業員用の通路に追い込んだ。大河内という飲食関連会社の社長だった。横をすり抜けようとすると腰をつかまれ、壁際へ引き寄せられた。振りほどこうとした私の胸にまで手を伸ばし、もみ合ううちにブラウスのボタンが二つ飛んだ。  物音に気づいた店長が駆けつけ、ようやく大河内は手を離した。翌日、店長と一緒に防犯カメラの映像を確認し、該当部分を別に保存してもらった。警察から求められれば、映像も従業員の証言もすべて提供すると言ってくれた。  私はその資料を持って、直人の事務所へ向かった。 「直人、警察に行こうと思ってる」  映像を見終えた直人は、眉を寄せた。 「ほかに怪我は?」 「手首が少し痛いくらい。目立つ怪我はないよ」  直人はしばらく黙ったあと、法律相談の受付票を私に差し出した。 「今日は予約が全部埋まってる。とりあえず資料を事務局に預けて、相談の時間を取ってもらって」  私は受け取らなかった。 「ほかの弁護士に相談しに来たんじゃないよ」 「わかってる。でも、ここは法律事務所だ。千晴が俺の妻だからって、所内の手続きを飛ばすわけにはいかない」  結局、私は資料を持って受付へ向かった。  午前十一時、事務局のスタッフから待合スペースで待つように言われた。正午近くになってようやく一人の職員が出てきたので、私は立ち上がった。 「神谷さん、申し訳ありません。前のご相談がまだ少しかかりそうです」  そう言ってから、彼女は私の後ろにいた女性へ視線を移した。 「白石玲奈さんですね。神谷先生から伺っています。身の安全に関わる案件ですので、緊急対応になっています。こちらへどうぞ」  私はその場で動きを止めた。  白石玲奈。直人が大学時代に付き合っていた女性だった。  相談室のガラス壁には、ブラインドが完全には下りていなかった。玲奈は中へ入ると、椅子の横で少し立ち止まった。 「千晴さんの相談、後回しにならない?」  直人は彼女のために椅子を引いた。 「玲奈のほうが緊急性が高い。千晴ならわかってくれる」  私は手の中の受付票に目を落とした。  直人が初めて司法修習のためのスーツを着た頃、私たちは二十平方メートルにも満たない古いワンルームで暮らしていた。あの部屋で、直人は私を抱きしめ、弁護士になったら二度と千晴を一人でつらい目に遭わせないと言った。  今、彼は本当に弁護士になった。  私は被害の証拠映像を抱えたまま、夫の法律事務所の外で、いつ自分の番が来るのかわからない相談を待っていた。
  16. 68

    僕の、旅。

    犀川よう様自主企画、第三回さいかわ葉月賞、選者参考作品として投稿いたしました。 https://kakuyomu.jp/user_events/2912051605244652286 テーマは『旅』です。 亡き祖父の母校である名門中高一貫校に通う『僕』は、大好きな祖母のために定期試験で学年首位となった。そのことからトラブルが起き、検査入院をした僕は、学校とやり取りをして、特別な休暇を得る。 それを機会に、僕は、唯一、首位が取れず悩んだ国語科目、問題文のテーマだった旅というものをしてみるのだった。宿泊先は、学校が予約した研修施設。問題文とは真逆、行き先の決まった旅であるが……。 ※熱中症の冷却位置については、日本赤十字社様のホームページを参照いたしました。(注・熱中症対策情報につきましては、本作の情報を鵜呑みにされますようなことはなさらず、都度、必要事項を状況に応じてご確認くださいますようにお願い申し上げます) 作中の『旅』の語彙解釈二例は、三省堂『新明解国語辞典』第八版から引用をしております。 ※2026.8.30、表記を二箇所修正いたしました。レギュレーションに抵触する修正内容ではございませんことをご報告申し上げます。 copyright©豆ははこ-2026
  17. 69

    やたら張り合ってくるクラスの女子にテストで負けた。喜ぶ彼女に「親との約束だから転校する」と伝えたら、めちゃくちゃ曇った

    同じクラスのチビ女子・駒ヶ林カルモは、なぜかやたら俺に張り合ってくる。 コーラ一気飲みやら階段駆け上がり競争やら、小学生レベルの勝負を仕掛けてくるアホなヤツだ。 あまりにうっとうしいので、ある日、約束させてやった。 定期テストで勝負して、負けたら相手の言うことを何でも聞く、と。 学年1位の俺が負けるわけがない――そう高をくくっていた俺だったが、カルモは目の色を変えて猛勉強し、俺を学年1位の座から追い落としてしまった。 勝ち誇る彼女は、赤面しながら俺に命令を告げる。 「そ、それじゃ、約束だからな。わ、私と付き合……」 だが、俺には彼女に伝えていないことがあったのだ。 「すまん。俺、親との約束で、1位じゃなくなったら転校しないといけないんだ」 「……へ?」 そのとき、俺は初めて見た。人間の目から光が失われる瞬間を。 「わ、私のせいで転校……? うそ、やだ、行かないでぇ!」 その翌日から、カルモの様子は一変して……? 不器用すぎて空回りする曇らせ女子との激甘ラブコメディ、開幕! ★週間ランキング(短編) ラブコメ部門 1位獲得 ★月間ランキング(短編) ラブコメ部門 1位獲得
  18. 72

    「愛妻家」を売りに大人気となった夫、その動画の無料小道具にされていた私

    亮介がほかの女と親しげにしていることに気づいてからも、私は、きちんと向き合って話すべきか迷っていた。ところが翌日、ネット上で六年前の動画を見つけた。悠斗を出産したとき、病院のルールで許可された範囲なら家族が撮影できたため、亮介は記念に残したいと言って、立ち会い出産の様子をスマートフォンで少しだけ撮っていた。映っていたのは私の顔と、握り合った手、それから痛みで言葉も出なくなっている私の姿だけだった。  その映像が、今になって十数分の動画に編集され、亮介のアカウントへ投稿されていた。タイトルは「妻の出産に立ち会って、初めて母親のすごさを知った」。動画は瞬く間に話題になり、リアルで感動したという声の一方で、痛みに耐える私の表情を切り抜いて面白がる人まで現れた。  亮介は概要欄に、「これから出産を迎える家庭の役に立つなら、美緒が頑張ったことにも意味があると思います」と書いていた。その一文を見た瞬間、もう話し合う気持ちは消えた。 「離婚しよう。悠斗は私と暮らす」  亮介は私を見ても、ほとんど驚かなかった。 「いいよ。ただ、離婚したい、悠斗も主にそっちで育てたいっていうなら、先にこれへサインして」  私はテーブルの書類に目を落とした。離婚後も定期的に撮影へ参加し、離婚したことは公表せず、カメラの前では仲のいい夫婦を演じ続ける。亮介のアカウントと企業案件のイメージを守るための契約だった。どうやら、この日を待っていたのは彼も同じだったらしい。  私は袖口に隠していたスマートフォンを取り出した。ライブ配信の画面はずっと真っ暗だったが、音声は切っていない。増え続ける視聴者数を見ながら、私は口を開いた。 「今の話、みんな聞こえてましたよね?」
  19. 73
  20. 91
  21. 書籍化作品2026年8月17日発売