タイトルの「Reptilia」は、
爬虫類を意味するラテン語ですが、
冒頭の1首だけでも、致死量、死ぬ、殺すと、
ただならぬ不穏さで溢れかえっています。
この暴力性は、
作品に一貫して流れているもので、
殴られ続けるような、
どこか甘美な陶酔感さえ感じられます。
8首目。
僕は傷つき胸掻きむしり歯軋りするものしか記憶しない
苦悶するものしか記憶しないというのは、
同じくらいの痛みを、
この「僕」も感じているからかもしれません。
サディスティックな美意識が揺曳している1首です。
9首目。
神経の奥潜む美しさに壊されたあの日の君がまだ愛おしい
暴力的な言葉が連鎖する中で、
この1首のみ「愛おしい」という言葉が現れます。
しかし「神経の奥潜む美しさ」とは何でしょう。
神経が記憶している美しい体験でしょうか。
だとしても、それに壊された君だけが愛おしいというのは、
不思議な説得力があって、
暴力の中に潜む愛の芳香が立ちのぼるのを感じます。
そうして、
全体に言えることは、
普通の短歌だと思って、
油断して読んでいくと、
繰り返し撥ね返されることでしょう。
作品の中で毒が蜜に変容していくような、
いいえ、毒が蜜そのものであるような、
詩的な情感が漂っているのですが、
その自ら築き上げた作品世界すら破壊するほど、
挑発的で実験的で抒情的な10首が、
鋭いカウンターパンチになって読者をノックアウトする、
そんな魅力あふれる短歌集になっています。
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