あこがれと恋

　椿章人は幼稚園のころに図書館で読み聞かせをしている棚田穂架に出会って、物語の世界に魅せられた。同時に、年上のお姉さんである穂架にも恋に落ちる。
　それから十年。章人は読書家の道を邁進し、穂架との交流を持ち続けていた。司書と利用者。崩れない年齢差のある関係に、早く大人になりたいと背伸びをしながら悶々とした日々を過ごしている。
　そんなある日、高校でクラスメイトになった陽キャな女子・木元文葉と図書館で遭遇する。意外性を感じながらも、本を取ってあったことをきっかけにして、二人は読書仲間として少しずつ距離を縮めていくことに。
　本の会話ができて、好きなときに本へ耽溺できる適度な間合いを持つ文葉との交流は、章人にとって等身大でいられる心地の良い時間となっていた。
　二人で図書館で時間を過ごしたり、穂…続きを読む