https://kakuyomu.jp/works/16817330649026392153/episodes/2912051602746295582
そんなわけで、第十話「父娘対面」です。
前回登場した物見の若侍、本多清隆ですが、名前の表記を遡って「清孝」に変更しました。
読みは同じ「きよたか」ですが、藤野忠興の家老である隆景(この人、好きw)と字が被るのが気になりました。
ちなみに、清孝自身は若いせいもあり、忠興の長男の従者のような役目を務めています。
ただし、彼の家柄は結構よくて、まだ現役の父親はそこそこの要職に就いています。清孝はまだ修行中の身ということですね。
羅の国、というより藤野家では、当主が代わるたびに南カシルへ船を派遣しています。
建前としては、当主の交代をつき合いのある南カシルに報せ、それを祝福する記念行事みたいなものですが、実際には本文で説明しているように金儲けのためです。
羅の国は国是として、西の大陸との交易を禁止した鎖国政策を取っているので、本来はそれに反するのですが、藤野家の権威を他国にも知らしめる示威行為だと強弁しているわけです。
藤野家側が儲かるということは、当然南カシルはそれ以上に利益が得られるので、藤野船の来航は大歓迎されます。
できれば航路を開いて南カシルから船を出したいところですが、藤野側は鎖国政策を守るため、決して航路を明らかにしませんでした。
莫大な経費と時間をかけて、独自航路を開発することは可能ですが、羅の国が交易を拒否している以上、それが無駄になるリスクが高く、計算高い南カシルの商人たちは静観している状況です。
何十年に一度の頻度だからこそ、他国の産物が珍重されて大きな利益を産んでいるので、わざわざ定期航路を開いて希少性を陳腐化させ、値段を下げなくてもいいだろうとの考えですね。
当主の藤野忠興が小夜と顔を合わせた回数は少なく、彼は親子の情をまったく感じておりません。
それとは逆に、小夜は幼いころから父の顔を教えられてきました。
忠興に見つからないような物陰から、こっそり覗くだけで、近づいたり言葉を交わすことは許されません。
それでも、彼女は父親に対する思いを醸成させて、それは思春期を迎えてますます肥大していきます。
母と自分を引き離したばかりか、母を館から追い出した恨みと憎悪を抱きながら、その一方で父親を理想化し、その存在を求めるというアンビバレンツ(二律背反)な感情が、彼女の心の内でせめぎ合っているのです。
そういう事情を考えると、今回描かれている父と娘の対面は、なかなか味わい深いですw
さて、次回は会談の続きとなります。どうかお楽しみに!