データに消えた僕 ―心をアップロードした青春―

君を覚えているのは、AIだけだった。

朝起きたとき、僕の名前はこの世界から消えていた。
両親も、友人も、僕を知らない。SNSの投稿は削除され、学校の名簿からも僕の名前はなかった。

唯一、教育用AI〈クラリオン〉だけが僕の存在を覚えていた。
やがて明らかになるのは、国家と企業が共同で進める「意識アップロード計画」の存在。

僕は知らぬ間に、その実験体になっていた。

記憶が薄れ、感情さえ失われていく中、
僕を写真に写し続けた少女と、心を持ち始めたAIと、
この世界に最後の「僕の存在証明」を残すために動き出す──。

データに残る心とは、誰のためにあるのか？
“青春”と“忘却”の境界を描く、近未来SF×感情ミステリー。