『累ヶ淵』という物語の中身は知らなくとも、不思議なもので、どこかでその名だけは聞いた事がある。 今の茨城県の鬼怒川の流路に実際にある淵だそうで、そこを舞台にした物語である。 怪談である。 江戸時代に人気を博して、類似の作品がいくつも作られたそうな。 その物語の「真相」を語りましょう、という物語である。 誰が語るのか? 語り部も、また、ミステリアスな女性。 作者は、令和のミステリーの新旗手・和久井清水(わくい きよみ)氏。 お化けとか幽霊とか出て来ないのだけれども、淡々と語られる人の業の累(かさ)ね合わせが、怖い!!
筆力が凄まじく、人物の描写がリアルなので、感情移入してどんどん読んでしまいます。物語の展開も、淡々として早すぎず遅すぎず、「この先はどうなるの?」というこちらの興味をうまく回収しながら進んでいくので、文体が硬いのに読みやすいです。
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