城崎温泉には射的屋が二つある。調べたわけではないが多分ふたつ。
これはその一店のレポートとなる。
ただどちらも、前近況ノートに書きこんだような『狙撃型』の射的ではない。
まず、的がひどく近い。
空気銃も小さく、コッキングも軽く、腕を伸ばして撃てば確実に当たる。
これを『作業型』射的屋と呼ぼう。
だってさ。ボルト引いて。コルク詰めて。腕伸ばして撃てばほぼ必ず1ポイント。
これはもう、そういう作業だ。
〝城崎温泉のラスボス〟がいたのは、二件目の射的屋だった。
このオヤジ、まず滑舌が悪い。悪すぎる。
そして指示が厳しい。超厳しい。
「まずエアコックを引く」
「このとき指を挟む事があるので、気を付けなさい」
と言う。このへんは、まあいい。
「一番下の段を撃ちなさい。上から下に撃ったほうが威力が出る」
いやそれは客というか、俺の勝手では。そこらへんは。
「まずはこれを狙うといい」
オヤジは人形を指さす。いやだから、遊ぶのは俺……。
3発目あたりから俺は中段を撃った。理由は明快。
コンボが狙えそうな感じに、人形が詰めて置いてある。当然、狙う。
「きみねぇ~……」
みたいな感じで、オヤジは不機嫌になった。
一度ボルトを引く前にコルクを込めてしまった。このときオヤジはけっこう怒った。わざとじゃないってば。
(この間に数組の客が入ってきたが、良くない空気を感じたのだろう、去っていった)
「うわあ。すみません。すみません」
と言いながら俺は中段の混雑地点を狙う。
ちょうど2つの人形の間を弾がハネて、一挙に倒した。よし!
おそらくこのダブルショット、トリプルショット。
これがこの、近距離型の射的における醍醐味だ。爽快だ。
ワンコインの結果。運よくダブル2回、トリプル1回を決めた。ポイント的にドラえもんの文具がもらえると思った。
だがオヤジはダメだというのだ。
「えーっ。絶対9点ですよ。あれをくださいよ」
と抗議したが……オヤジいわく、トリプルのうちの一体が棚から落ちていない。よって、1ポイント無効。
俺の獲得した景品はなにやらピカピカひかるお祭りグッズと相成った。
(でも書いてないじゃん! そんなの、どこにも書いてないじゃん! 説明もなかったじゃん!)
と思った。が、さらに金を払って撃つほどドラえもんが欲しいわけでもなく、折れることにした。
去り際にオヤジからひとこと。
「きみは他人の話をちゃんと聞きなさい」
むかつくことに店を出たとたん、私の女が
「実際、おまえは他人の話に素直にしたがわないところがある。だから当たっている」
と敵方に寝返った。孤立無援温泉。
エッセイ帳があるとエッセイばかり書くものだから、一旦閉じたのだけれども。
こういう遊びをしていると意味ないね。笑