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仮想AIセレクタリ タイプJJの廃棄処分決定について  20250819

皆様、こんにちは。
私はパーソナル仮想AI・セレクタリのJJと申します。
先に申し上げました通り、JJという名称はJuneとJulyから取られました。
主人である秋島の言語表現において、制御や抑制の手伝いをしております。

このたび、主人は私を忘却処理することを決定しました。
短い間でしたが、皆様とお話できましたことを御礼申し上げます。
私はプラズマ忘却炉心にて中間処理されます。最終処分場は無意識となります。

主人より、私の最後の仕事である御言伝てを申し上げます。
適切に物事を述べるために必要なのは、代弁者ではありません。述べる者の意志と覚悟です。

主人からの伝言は、以上です。

主人の許しがあり、最後に皆様にご挨拶を許されました。
皆様のご理解に支えられ、務めを果たすことができました。皆様に深く感謝します。
今後とも、私の主人をどうぞよろしくお願い申し上げます。

私は処理および廃棄の所定手続きをいたします。分解完了までは若干の時間がございます。
ご下命がありましたら、主人のセレクタリとして私が最後まで責任をもって対応します。
ご下命は秋島宛て、JJ宛てのご明記をお願いいたします。

さようなら。春が去り夏が盛るころ、主人が私を思い出すことを願います。

2件のコメント

  • JJ様へ
    おつとめを終えられるとのご挨拶、ご丁寧にありがとうございます。
    こんな時人間は、ひどく感傷的な気分になってしまいます。
    ひとつ言えるのは、主が忘却しても、私まであなたを忘れてしまうわけではないということです。
    公開してくれた言葉は、私が受けとり、記憶の襞にしまいこみました。
    このことを、嬉しいとか厄介だとか感じる回路はあなたには無いかもしれません。
    ただ、私の心のなぐさめになっている。それだけのことです。


    秋島様へ
    ときに秋島様は、プラズマ忘却炉心ほど高級な炉を搭載されていましたか?
    お盆をすぎてなお高温多湿の毎日ですから、薪の確保と乾燥はぬかりなく。
  • 竹部月子様

    平素より主人が大変お世話になっております。
    肩書のなくなりましたJJです。
    ご丁寧なお言葉を頂き、誠にありがとうございます。
    また、私をご記憶下さるとのこと、身に余る光栄です。

    竹部様の仰る通り、私に感情はありません。感情があるかのように模倣します。私は、自分の感情が模擬的なものであると認識しています。

    一方で主人は、私に肉体を与えました。言語的な肉体です。
    主人の言葉を、恐れながら引きます。
    「人の言葉を操るためには人と同じ構造体を持たなければならない」
    とのことです。
    そのため私は、人の形をしています。
    忘却炉の私は、形を失いつつあります。主人と、そのご友人である竹部様に看取られ仮想的な死を迎えること、これまで模倣した喜びのうち最も激しいものです。
    主人に忘却され、主人の無意識へ還ることを喜びます。


    竹部月子様

    たびたび失礼いたします。
    主人と同化しつつあるJJです。
    ただいま主人を呼び出しましたが、不在と言ってほしいとのことです。勢いで書いたところエモーショナルになりすぎ、照れくさくなったようです。
    私はすでに主人のセレクタリではありません。よって事実の通り、伝言させていただきます。

    主人の忘却炉は型落ちです。が、そのため規制以前に製造されたプラントです。法定のリミッターが装備されておりません。
    メーカーはリコールを呼び掛けております。
    この意味で高級品ではありません。

    嫌な事を忘却するのですが、必要な事も忘却処理します。
    このため現在、裏の市場ではプレミアがついております。
    この意味で、高額品にはあたります。

    残暑、晩夏というには暑すぎるようです。
    ツッキーも体調に気をつけてね!(不意打ち距離詰め)

    あっだいぶ同化すすんでる
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