「猿の手」を上手く利用した伏線回収。あからさまなのに気づけない快感。

 解決編のとあるワンシーンで思わず唸ってしまいました。問題編でこれ見よがしに記されているのに、全く「そう」は見えなかったのが悔しいです。手掛かりの配置として非常に秀逸なものだったと思います。

 本作は怪奇小説に登場するという『猿の手』を扱った作品です。何でも願いを叶えてくれる一方で、その代償として何か不幸が起こるという呪物だそうです。

 主人公の「俺」は何者かに殺害されてしまい、まさかの『猿の手』に転生してしまいます。猿になって主人公がディスられまくるのはもはや恒例行事(笑)。いつも通りコメディーなところも面白いです。

 そして待ち受ける解決編。周到に張り巡らされたトリックや伏線に支えられており、読者が一部分を解くというのは十分に可能でしょう。多分この内容を全部事前に読み解ける人はいないと思いますが……(笑)。

 海外ミステリのあれやこれやがオマージュとして登場するのもニヤニヤしてしまいました。僕はあんまり海外は読まないんですけど、それにしても「ポアロで密室」といえばアレしかないよな、などと先回りしながら読めて楽しかったです。

 コメディーとミステリがものの見事に融合した作品です。今回は黒澤先生の「お題で執筆」の中でも本格度が高い作品で、爽やかに読み終えることができました。イチオシです!

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