主人公である私、細田美玲はその容姿から、何度も男子達から告白を受けていた。そんなある日、机の中にはとある手紙が入っていた。その内容は、放課後に屋上へ来て欲しい、というものだった。
男子からの告白に飽き飽きしている細田美玲は、嫌々放課後に向かうと、そこには一人の男の子が。そして案の定、彼は細田に『付き合ってくれ』というのだが——。
といったお話です。
読み終わって思ったことは、手紙の美しさとその利便性。そして、切なさです。
手紙はすぐには送れませんし、受け取れません。でもそれが、相手の返事を待つ幸せを感じさせてくれると思います。
けれど、それは幸せでもあり、場合によっては辛くもあることなのです。
現代ではほとんど見かけなくなった手紙ですが、このお話はタイトルにもある通り、手紙のお話になっています。
その手紙を巡って、どんな想いが交差するのか、現代を生きる人々にこそ、見ていただきたいです。ぜひ、ぜひご一読ください。
主人公の「私」こと細田美玲は容姿だけでモテまくり、単純な男たちから度々告白されることにうんざりしていた。
そんな中、羽崎という男子が告白してくる。最初は有象無象と同じ奴なのかと思ったが……。
羽崎は「君の字が綺麗だから手紙の送り合いをしたい」と申し出てきます。想定外の告白に衝撃を受ける美玲。世にも不思議な二人の文通が幕を開けます。
やはり「小説」と「手紙」は物凄く相性がいいなと感じさせられました。羽崎から送られてくる手紙をあたかも美玲になったような気持ちで読みふけってしまいました。
以前の作品『しりとり告白』とタイトルは似ているものの、描かれる恋模様のテイストは全く異なっています。いつものことですが、引き出しの多さに戦きました。
お題「手」に寄せて書かれた本作。本作には「手」で書かないと伝わらないこともある、という大きなメッセージが込められています。
インターネットが完全に普及した現代。LINEやDiscordで気軽に会話をすることが当たり前。メールすら個人の連絡にはあまり使わないのに、ましてや「手紙」を書く機会など大きく減ってしまいました。
それでも「手」で書くからこそ生まれる情感もある。手の震えや消しゴムで何度も書き直した跡から伝わってくる相手の気持ち。そういう我々が過去に忘れ去ってしまった感覚が如実に表現されていて素敵でした。
この物語を読んで、真っ先に思ったのですが……
皆様、今年、年賀状出しました?
そしてもらいましたか?
私が幼少期の頃はまだ、年賀状という文化はぎりぎり残っていました。
それは、学校の同級生だったり、学校の先生だったりでした。
便利な世の中になったと思います。
だって、年賀状なんて考えれば考えるほど必要じゃあないんです。
メールだってラインだってある。
送りたい時に相手に言葉なら送れる時代です。
文章も考える必要だってないんです。AIが考えてくれますから。
じゃあ、AIにどんな注文をすれば自分の望む文章が書けるのか?
大丈夫。そのためのAIだってそのうちできることでしょう。
人の書く文字に、触れる機会は圧倒的に減りました。
年賀状にしたって、手書きのものを送る人なんていないのではないですか?
このご時世に年賀状を送る方なんてどうせ企業の方でしょうから、何百通と送らないといけないわけですしそれは、手書きなわけがないんです。
そんなご時世に……
『手書きの文字』で、思いを伝えることにこだわった、
ある少年と、そんな少年にあてられた、少女の物語。
思いはインターネットで通じるけれど、
文字で書いた思いはなかなか伝わらない世の中。
手紙。それは一つの芸術品たり得るのではないでしょうか。
皆様も、たまには手書きで誰かに想いを届けるなんていかがでしょう。
世の中、何が起きるかわかりませんのでね。それができるうちに……。
ご一読を。
手書きだからこその、ゆっくりと、丁寧に紡がれていく感じ。
「手紙」で綴られる文章には、メールなどにはない味わいが確かにある。そこには予測変換もないし、ちゃんと平らな台となるものがないと綺麗に線を引くこともできない。
でも、手書きする文字には、一文字一文字にその人の「心」が籠りやすい。
細田美玲は美少女として評判で、顔目当てで告白されることが多かった。だから羽崎敏行から告白された時にも同じような理由だろうと断るつもりでいた。
でも、羽崎が美玲を好きになったのは、「字が綺麗だったから」であり、手紙のやり取りをしたいと言われる。それに意外性を覚えて美玲は告白を受け入れる。
その後、二人は手紙のやり取りをし、美玲は着実に手書きの文字の良さも知り、羽崎との絆も着実に紡がれていくようになる。
でも、この世界ではそんな二人が平穏に暮らすことは難しく……。
やがて、美玲と羽崎のもとに訪れる事態。美玲のもとに届けられた一通の手紙。
ラストシーンがとにかく切ないです。タイトルにもあり、冒頭で羽崎がこだわりを持っていた紙ヒコーキ。その小道具の使われ方を見た時に、ジーンと心に響くものがありました。
利便性から遠ざかるからこそ、強い想いが籠る手紙。しっとりとした静かな空気の中で紡がれる二人の物語がとても切なく、深い余韻を残してくれました。
2030年、第三次世界大戦が起こり、日本も巻き込まれていた。
そんな最中だと言うのに、細田さんは何人もの男子生徒から告白され嫌になっている。顔が綺麗でスタイルもいい、外見ばかり見ていられるのも嫌なものだ。
そんな折、クラスメイトの羽崎君から屋上に呼び出された。彼は細田さんの文字が美しかったから、手紙のやりとりをしたいと言う。了承し、お互いに手紙のやりとりをしていくふたりだったが――。
羽崎君が屋上で紙ヒコーキを飛ばすのは、空を飛びたい代替行為だと言うセリフにまずやられました。
ふたりが文通をしている時には、羽崎君は字が上手じゃないけれど、一生懸命に書いているというのがわかり、だんだん羽崎君に惹かれていく細田さん。
ふたりを包む時間が美しくて、切なくなりました。
ふたりがどんな行く末を辿るのかはご自身の目でお確かめ下さい。
私は泣きそうになりました。
羽崎君の純粋な想い。細田さんの純粋な想い。
フェンスを越えてどこまでも届いて行きますように――。そう願わずにいられません。