もう届かない『何処か』へ想いを込めて、紙ヒコーキを空へと送る

 手書きだからこその、ゆっくりと、丁寧に紡がれていく感じ。

 「手紙」で綴られる文章には、メールなどにはない味わいが確かにある。そこには予測変換もないし、ちゃんと平らな台となるものがないと綺麗に線を引くこともできない。
 でも、手書きする文字には、一文字一文字にその人の「心」が籠りやすい。

 細田美玲は美少女として評判で、顔目当てで告白されることが多かった。だから羽崎敏行から告白された時にも同じような理由だろうと断るつもりでいた。

 でも、羽崎が美玲を好きになったのは、「字が綺麗だったから」であり、手紙のやり取りをしたいと言われる。それに意外性を覚えて美玲は告白を受け入れる。

 その後、二人は手紙のやり取りをし、美玲は着実に手書きの文字の良さも知り、羽崎との絆も着実に紡がれていくようになる。

 でも、この世界ではそんな二人が平穏に暮らすことは難しく……。

 やがて、美玲と羽崎のもとに訪れる事態。美玲のもとに届けられた一通の手紙。

 ラストシーンがとにかく切ないです。タイトルにもあり、冒頭で羽崎がこだわりを持っていた紙ヒコーキ。その小道具の使われ方を見た時に、ジーンと心に響くものがありました。

 利便性から遠ざかるからこそ、強い想いが籠る手紙。しっとりとした静かな空気の中で紡がれる二人の物語がとても切なく、深い余韻を残してくれました。

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