紙ヒコーキ告白

桜森よなが

告白

「細田さん、好きです、付き合ってください!」


 まただ、これで今日三回目。

 体育館裏に呼び出された私は、同じクラスの山野君から告白されていた。


「私のどこが好きなの?」

「顔がきれいで、その、スタイルもいいし……」


 これも三回目だ。

 もう飽きているのよ、そう言われるのは。


「ごめんなさいね、山野君」


 断ってすぐに教室に戻ると、にやにやとした顔で、友達の小村さんが声をかけてきた。


「みれいちゃん、相変わらずモテモテで羨ましいなぁ」

「あなたね、実際私の立場になってみると、そんなこと言えなくなると思うわよ?」


 そう言いながら、自分の席に座ると、机の中に何か手紙が入っていることに気づいた。


 話したいことがある。放課後、屋上で待ってます、。

 と書かれていた。今時手書きで。下手くそな字だった。


「きゃー、これで四回目ね!」


 なんて小村さんが自分がされてるわけでもないのに、はしゃいでいる。

 はぁ、やれやれってかんじだわ。


 そして放課後。

 言われた通り、屋上に行ってみると、そこの中心らへんで紙ヒコーキを飛ばしている男子生徒がいた。

 同じクラスの羽崎くんだった。

 あまり会話したことがないけど、無口で暗い人という印象だ。


「なんで紙ヒコーキなんて飛ばしているの?」


 声をかけると、彼は身体を私の方に向けた。


「来てたのか」

「ついさっきね、それでなんでなのよ」

「理由か……考えたことなかったな、でも、そうだな、たぶん、鳥になりたかったんだと思う」

「意味がわかたないわ、それがどうして紙ヒコーキを飛ばすことにつながるのよ」

「俺は飛べないからさ、代わりにこうやって紙ヒコーキに飛んでもらうんだ。たぶん、これはそういう代替行動なんだと思う」

「ふーん」


 なんていうか、変な人。こんな奴だったんだ、羽崎って。


「ところで、私を屋上に呼んだのって、あなたで合ってる?」

「ああ、そうだ」

「で、話したいことって何よ」


 彼は姿勢を正し、私を真っ直ぐに見つめてきて、


「好きだ、僕と付き合ってくれ」

「はぁ、やっぱり、これで四回目ね」

「四回目? ああ、告白をされた数か?」

「ええ、そうよ。世界は今あちこちで戦争をしているというのに、のんきなものだわ」

「だからじゃないか、みんな悔いのないように生きようとしているんだよ、きっと」

「そうかしら、でも、悪いけど、私はあなたの告白を断るつもりよ」

「え、なんで?」

「だって、どうせあなたも私の顔が好きなだけでしょ」

「違うよ」

「ほんと? なら胸かしら。男ってほんと胸ばかり見るわよね、視線でわかるのよ、バレてないと思っているのかしら、どうせあなたも私とやりたいだけなんでしょ?」

「すごい偏見だなぁ」

「あら、違うっていうの?」

「少なくとも僕は違うよ、僕は君と手紙を送り合いたいだけなんだ」

「手紙? 今時? スマホがあるのに?」

「手で書いた文字だからこそ伝わるものってあると思うんだ」

「ふーん、まぁあなたがそういう考えなのはべつにいいとして、どうしてその相手が私なのよ」

「君の字が好きなんだ、あの繊細で優しそうな字が、今年の四月だったかな、黒板に君がチョークで文字を書いているのを見てから、君のことがずっと気になっていて。いつか手紙を送り合いたいなって思っていたんだ」

「ふーん、なるほど、あなたはそういう性癖ってわけね」

「性癖って……まぁいいや、それで、手紙、書いてくれる?」


 私にそんなこと言ってくる男子は初めてだった。

 だからだろうか、好奇心で「はい」と言ってしまった。


 それから彼と手紙を送り合う日々が始まった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る