概要
結局のところ、ガキなんだよ
病気の母の療養のため、華やかな東京の街を離れ、自然豊かな奧間(おうま)の街に移り住んだ久遠無雲(くおん なきぐも)とその家族だったが、程無くして件の母は亡くなってしまう。これ以上ここに住む理由の無くなった他の家族は東京に舞い戻ったが、彼だけはここに住み続けることを選んだ。
特にこの街が気に入ったわけではなかった。家族との折り合いが悪かったわけでもなかった。母と過ごした半年程の短い期間で、生涯の友人を得たわけでもなかった。それでも彼は、この街を選んだ。彼自身も理由が分からないままに「ここが僕の居場所」と直感してしまった。
だからこれは、彼がその理由を見つけるための嘘みたいな青春の話だ。
そう、始まりにはやはり春が相応しい。だったら春の話をしよう。彼が奧間に来てから過ごす二年目の春
特にこの街が気に入ったわけではなかった。家族との折り合いが悪かったわけでもなかった。母と過ごした半年程の短い期間で、生涯の友人を得たわけでもなかった。それでも彼は、この街を選んだ。彼自身も理由が分からないままに「ここが僕の居場所」と直感してしまった。
だからこれは、彼がその理由を見つけるための嘘みたいな青春の話だ。
そう、始まりにはやはり春が相応しい。だったら春の話をしよう。彼が奧間に来てから過ごす二年目の春