清算

*


 帰る途中で、僕はホームセンターで新しい上履きやその他諸々を購入した。買った物を整理するついでに大掃除じみた事をしていると、引き出しの奥から封筒が出てきた。ひとまず放っておいて、後で見ることにする。途中で何かをしてしまうと、僕はきっともう掃除に戻らない。


 一通り整理を終えてから、座布団に腰掛け、壁に背を預ける。


 はて、僕はどうしてこんな事をしたのだろう。


 部屋の状態をざっと眺めて、自分の行動原理を解明しようと試みてみたけど、十秒で諦めた。諦めたというか、飽きたというか。


 そんなことより、これだ。

 適当に糊付けされた封筒を、これまた適当に破り開いて、中を取り出す。


「……はは」


 決して長くない文を読んで僕は、未だ慣れない笑みを漏らす。


 手紙には僕の字で、僕らしい言葉で、僕らしくない事が書かれていた。


 手紙から顔を上げて、再度部屋を見渡す。


「なるほどね」


 グラスも皿も、箸も座布団も、その他諸々、何もかもが二、三個増えた、誰かを招けそうになった部屋をもう一度見渡す。


 らしくないと思ったら、こういう事か。


 僕は小さく笑い、ポケットから歯型のついた消しゴムを取り出して、手紙に書かれた数字の零を、二つ消した。

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