月影冷凝凍 ――凍てつく月影を、銀槍が切り拓く

後宮×武侠×怪異×ミステリー、さらに淡いロマンスの気配まで。
魅力の層が何重にも重なっているのに、読んでいて散らからず、スッと物語の芯に連れていかれるのが気持ちよかったです。

何より好きなのは主人公・璃月のキャラクター。
“可憐な公主”の顔と、槍を握る武人の顔。そのギャップがただの属性盛りではなく、彼女の劣等感や矜持と結びついているので、強さも可愛さもちゃんと胸に残ります。怖がりなのに踏み込むところも含めて、応援したくなるタイプの主人公でした。

相手役の暁霄もまた良い。武人としての誠実さがブレず、言葉が不器用なのに、行動の端々で信頼が積み上がっていく。二人の距離感が“甘いだけ”ではなく、互いの立場や矜持に触れながら進むので、じわじわ効いてきます。

そして後宮ものとしての面白さも強いです。
噂と視線、建前と本音、権力の配置。そういう「空気」がきちんと張っていて、ミステリー要素が乗ったときに説得力が出る。章の切り替わりで景色が変わる感じもワクワクしました。

後宮ミステリー/武侠アクション/強い姫/じれったい恋の気配が好きな方におすすめです!

この素晴らしい物語の「武」と「情」、そして劇中に流れる詩への返歌として。

深宮花魄動刀兵 深宮 花魄 刀兵を動かし
月影冷凝凍夜明 月影 冷凝して凍て 夜明ける
銀槍破夢翻天命 銀槍 夢を破りて 天命を翻し
旧情夢中封亦成 旧情 夢中に封ずといえど なお成る

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