この物語自体が、あなたのために練られた一炷の香り
- ★★★ Excellent!!!
『きき処 木葉堂』——香りを「きく」店であり、悩みを「聞く」店でもある。訪れる人々はオーダーメイドの練香に癒され、自分だけの香りとともに帰っていく。店を営む父娘と、そこに迷い込む客たちの心の物語。
読み進めるほどに、この作品自体が一つの「練香」なのだと気づかされます。
安息香の甘さがそっと心を包む。甘松がその甘さに陰影を与え、ウコンのエキゾチックな刺激が不意に弾ける。大茴香が薬膳のように身体へ沁み、藿香の清涼感が胸の奥を通り抜ける。貝甲香がすべてを繋ぎとめ、ほのかな余韻へと導く。そして白檀が——忘れていた記憶をそっと呼び覚ます。
香原料が複層的に重なって一つの香りになるように、日常の描写、香道の知識、人々の心の癒しと成長が溶け合って、読後にほのかな余韻を残してくれます。
「世界にたった一つの自分だけの香り」を持つ贅沢さ。
あなたも、あなたのための香りを探しにぜひ『きき処 木葉堂』へ。