主人公は真面目に生きている会社員の女性です。
一生懸命働いているのに上司からは認められず――。
そんな彼女を気に入り、自分の店で働いてと言い出したのは美しい少年の姿をした魔法使い。
可愛らしい高飛車さというのか、わがままさというのか、とにかく読み始めてすぐに虜になってしまいます。
その使い魔のメイド青年(間違っていません。メイド服の青年です)もいいキャラです。
彼らとの会話も楽しく、読み進めると中毒性があってずっと読んでいたくなります。
この喫茶店を訪れるお客さんたちはそれぞれに複雑な感情を抱えていて、それぞれがとても考えさせられるお話なのですが、不思議と読み終わると心が軽くなります。
ちょっと疲れた時、ほっと息をつかせてくれるような作品です。
社畜として働く主人公イッコちゃんが連れ込まれたのは、「ロバの耳」。
そこは魔法使いの店主マユリが、人間の毒を食事として集めるために開いている幻想喫茶店。
強制的に働かされるようになった彼女ですが、呼び寄せられた人間(客)が、溜まっていた毒を吐き出し、帰っていく姿を見てそれが何かを知っていきます。
客が帰るたびに、主人のマユリや先輩メイドのエミ(男性)に解説される彼女を通して、読者も、こんな事あるよね、そうだったんだ、と誰しもが思い当たることがあるような、色々な感情が呼び起こされるエピソードたち。
なんでそんなことをしたの?その語る言葉がすべて?人間の複雑な感情も他方の視点で見ることで気づかされます。
さて、イッコちゃんも抱えている毒があるようで。彼女が店員として雇われた理由は何か、彼女の毒も食べられてしまうのか、それとも可愛がられているように見える店での彼らの好意は本物なのか、皆様も見届けてください!
正直、本職の会社のほうがブラックで、喫茶店のほうが良さそうですが…ツンな先輩エミがなにげに面倒見がいいのが微笑ましいです。
チーズ店で販売員をしている女性主人公は、自分の接客で客たちが喜んでくれることを嬉しく思っていた。その一方で、上司からは目をつけられている。主人公はそのことに悩み、気落ちしていた。
そんなある日、主人公は美少年と筋骨隆々のメイドから、攫われるように喫茶店に連れてこられる。そして美少年から「僕のもの」として、この喫茶店で働くように強要される。そして先輩メイドからは後輩として認められてしまう。美少年は他者の「毒」を好んで摂取するのだという。この喫茶店は、店側が何かを提供するのではなく、逆に客の毒を美少年が掬い取る店だったのだ。
主人公は美少年と先輩におされて、店を手伝うことになる。主に客を招き入れるのが主人公の役割で、「コンセプト喫茶」と名乗った。そこに来るのは、悩みという毒を持った人だったり、善意という毒を持った人だったりする。個性豊かな来客を相手にしている内に、主人公も慣れていくのだが、美少年は毒が最近変な味がすると言う。
そして主人公には意外な経歴があった。果たして主人公の経歴とは?
善意すら、毒。
確かに善意は強すぎると強要になったり、受け入れられなければ苛立ちになったりするものだ。それに、「カワイソウな人に優しい自分」に酔っていることもあるだろう。作者様の目の付けどころにハッとする一作でした。
是非、ご一読下さい。
「この世の全てに毒はある」——この一文に、心を鷲掴みにされました。
悪意だけでなく、幸福や愛情、執着すらも「毒」として抽出してしまう。そんな美しくも残酷な哲学を、喫茶店という舞台に落とし込んだ発想が鮮烈です。
「空っぽの人形」を自認する社畜女子・イッコが迷い込むのは、幻想喫茶「ロバの耳」。
そこにいるのは、無垢な美少年の顔をした毒の魔法使い・マユル坊ちゃんと、巨躯の男性メイド・エミ先輩。
このトリオの配置が絶妙で、導入から一気に物語の空気に引き込まれました。
特筆すべきは、感情を可視化する描写の巧みさです。
金の杯に注がれる毒の色が、赤、青、濃紺、群青と変わり、味や温度、そして音にまで宿る。
美しいのに、どこか背筋が冷える。まるで自分の心の奥底まで覗かれているようで、目が離せません。
各話で客の「毒」を解き明かすミステリー的な構成も見事です。
甘い香りに隠された切実な本音や、何気ない一言が生んでしまった哀しいすれ違い。
言葉の表と裏を丁寧に剥がしていくたび、こちらの感情まで揺さぶられます。
会話のテンポも抜群で、シリアスなテーマを扱いながらも、読んでいる間ずっと心地よかったです。
お洒落で哲学的で、それでいて頷かされる。
毒を愛せと囁く喫茶店で、空っぽだった人形が少しずつ自分の輪郭を取り戻していく物語。
皆様もぜひ、ピーコック・グリーンの瞳に導かれて、幻想喫茶「ロバの耳」へ。