【案内人・葛城二華より】
誕生日特別編をお届けいたします。
前回の特別編では、夏凪さんの八月を描きました。季節は一つ進み、九月一日——始業式の日でございます。
本日の主役は、成瀬 正義先生です。聖カレイド学園の音楽教諭であり、生徒会顧問。——穏やかな微笑みの方です。その微笑みの奥に何があるのか,ほとんど誰にも読めません。
放課後の職員室に、一人ずつ足音が届きます。花束、和菓子、経費精算フォーマット、敬礼。それぞれの形で、それぞれの生徒が九月一日を祝っていきます。成瀬先生は、すべてに同じ微笑みで応じます。
夕方、商店街の小さな料理屋に、三人が並びます。一人だけがずっと喋り、一人が穏やかに聞き、もう一人が静かに頷いている。にぎやかな食卓です。そこで、じゅんさんの短い一言が届きます。
成瀬先生の微笑みは、この物語の最初から最後まで消えません。
タイトルは「選んだ場所の温度」。このタイトルが何を指しているかは、最後の数行を読み終えたあと、成瀬先生が歩いている夜道の空気の中に、お感じいただけるかと存じます。
※本作のイラストはAIを用いて制作していますが、キャラクター・服装の設定および最終選定は作者によるものです。