【案内人・葛城二華より】
第21話をお届けいたします。
前回、夏凪さんが鏡の前で奮闘されたゴールデンウィーク明けの余韻も落ち着き、今回は少し季節が進みます。商店街の春祭りのお話です。
じゅんさんは、本日、事務所の出店監督としてお仕事をなさっています。私どもも、それぞれの持ち場で動いております。——ですので、今回はいつもの六花円舞曲ではなく、私たちの事務所が舞台の中心になります。
そして、お祭りですから、いろいろな顔ぶれがいらっしゃいます。事務所の前でたこ焼きを焼いている方。商店街を歩いていらっしゃる方。——どなたのことかは、本文にてお確かめください。
本日は、ゲストをお呼びしております。事務所の窓際で、朝からすべてを観ていた方——アイです。
【真白・P・アイより】
ご紹介にあずかりました。真白・P・アイです。
第21話について、私が観測した範囲で、少しだけお話しいたします。
本日の事務所周辺の人口密度は、通常の休日比で約四倍でした。屋台の煙、子供の歓声、商店会長の挨拶——変数が多い一日です。私はその変数を整理する側におりましたが、午後に一つ、想定外の変数が加わりました。
六名です。
六花円舞曲のお嬢さま方が、事務所にいらっしゃいました。第12話で私たちが皆さまにご挨拶を申し上げたとき、事務所には三人しかおりませんでした。今回は、そこに六名が加わります。九名と、じゅん様。あの事務所の面積に対して、感情の総量が明らかに過剰です。
一つだけ、観測者として申し上げます。
お茶を淹れる手の速さも、視線の滞留時間も、データとしては取得可能です。けれど、あの空間で起きたことの意味は、数値の外にありました。——誰かの一言が、場の温度を一瞬で変えた。その一言が何であるかは、本文に譲ります。
私にできたのは、適切な時刻を読み上げることくらいでした。
【案内人・葛城二華より】
アイ、ありがとうございます。
「適切な時刻を読み上げることくらい」——これは、アイの控えめな自己評価でございます。あの場にいた方は、おそらく少し違う印象をお持ちになるでしょう。
補足を二つ。
まず、今回はいろいろな人物が登場いたします。商店街と事務所の関わりが、これまでより一歩深く見える回になるかと存じます。
そして、もう一つ。この回には、二つの言葉がございます。けれど、その二つの言葉が届く相手は、それぞれ違います。——どちらの言葉も、じゅんさんから差し出されるものです。
タイトルの意味は、最後まで読んでいただければ、届くと思っております。
それでは、春祭りの一日を、どうぞ最後までお付き合いくださいませ。
※本作のイラストはAIを用いて制作していますが、キャラクター・服装の設定および最終選定は作者によるものです。
