少年の日の健やかさと、大人になって噛みしめる渋み。そんな多層な味わい

 まさに、カクテルのような多層的な味わいの作品でした。

 主人公がBARにて「エッグノッグ」を注文する。卵を使った特徴的な飲み物。アルコール入りで大人な感じも出せるし、子供でも飲めるようなスイーツ的な雰囲気もある。

 そんなエッグノッグについて、「霊が見える主人公」には幼い頃の思い出があった。
 幽霊が見える体質を持っていた彼は、生きている人間にも死んでいる人間にも「深く関わらない」ことで自分を守っていた。

 そんな彼の前に、一人の少年の幽霊が現れて……。

 この幽霊の少年とのやり取りが、とても新鮮なものでした。
 幽霊なんだけど、生きている少年よりもずと「陽」の感じを持っている。人生の喜びとか日常の楽しみ方なんかを知っている彼は、この世界をとても肯定的に捉えている。
 
 そのやり取りを見ていて、自然と心があたたかくなる感じがしました。
 本当に、ちょっと見方を変えるだけで、人生や日常はいくらでも味わいを見せてくれるものなのかもしれない。
 それを「幽霊」が教えてくれるというコンセプトが、なんとも粋な感じがしました。

 少年の日の思い出のような健やかさ。そして、それを思い出して噛みしめる大人の渋み。
 一作で複数の味わいがある。まさにエッグノッグのような多層性を持った一作です。