第一印象の良し悪しで、それに抱く感情が決定されることは多いと思うのですよ。
特に味覚に関しては、そうなのではないでしょうか。
最初に味わった時の感覚が悪ければ、大きくなって味覚が成長したとしても「おいしくない」とか「苦手だ」とか思ってしまう方、多いのではないかと思うのです。
でも、このお話は、その仮説を逆に証明してくれます。
エッグノックは、お酒を入れるか入れないかで、大人も子供も楽しめるもの。
でも、甘さに特徴があるので、苦手な人は苦手。
だけど、ふと飲んでしまうのは、それを「はじめて」知った時が、とても良い場面だったからでしょう。
単に才能があるから、これが好きだからという理由では選べない職業は多々ありますが、今作の主人公であるライターさんがライターという職を選び、エッグノックを口にする理由が、とても穏やかで優しい空気をもって描かれています。
寒い時期にこそおススメ。この物語をぜひ味わってください。
卵をベースに、牛乳や砂糖やスパイスを混ぜた温かい飲み物。それがエッグノッグ。
ラム酒やウイスキーを混ぜて作ることも多いけれど、あの日に君が教えてくれたレシピは子ども用のエッグノッグ。それはきっと、穏やかで独りぼっちの味。
だから人生をかけて、このレシピを完成させよう。未知なるスパイスを求めて、外の世界に探しに行こう。時には寒さに震える夜も、あの日の君の手の冷たさと重ねれば温かい夜になる。
この人生もこの心も、君にはまだ内緒のまま。それはまだ未完成のレシピだから。
穏やかで独りぼっちの君といつか、優しい味のエッグノッグを一緒に飲もう。
それはきっと、あの冬の日に聞こえた歌声のように、温かい。
物語は、静かなバーから始まる。
主人公はここの常連。
マスターとの気心知れた会話が耳に心地よい。
主人公は、マスターに「エッグノッグ」をアルコール抜きで注文した。
二ページ目からは、舞台が主人公の少年時代へと移る。
クリスマス直前、廃教会の誰もいない礼拝堂に響いていたボーイソプラノ。
その歌声の主は、ブロンドの少年だった――
ここからどのように「エッグノッグ」へと繋がるのか。
また、主人公がなぜ今の仕事を続けているのか。
遠い日の記憶が光に溶けてやさしく降るような、冬の日の掌編。
こんなバーのカウンターで、温かいエッグノッグを飲みながら読んでみたくなった。
著者曰く、この作品は『「話を聞かせて」の閑話にあたる』とのこと。
未読の方は、ぜひそちらも読んでほしい。
「話を聞かせて」ファンより
寒いとホットミルクが飲みたくなる。でもただの牛乳だと物足りないから、卵に砂糖、シナモンなんかを入れてたまにはエッグノッグに。
私は横着なので、スパイスの代わりにスパイスドラムを入れて飲むのが好きです。だからラムを入れた温かいミルクセーキを飲んでいる気でいたけれど、スパイスドラムにシナモンなども入っているので、これはなんちゃってエッグノッグだとこのお話を読みながら気付きました。
主人公にエッグノッグという飲み物を教えてくれた彼は、きっとどこからからずっと彼女を見守っていてくれているのでしょう。
彼に会い、その問いに答えるたびに、主人公はまだまだ人生楽しまないとと生きる活力をもらえるのかもしれません。
ホラーだけど優しくて温かいお話です。
冬の静謐な空気と、一杯の「エッグノッグ」が紡ぎ出す、至高の短編ミステリアス・ファンタジーです。
物語は、行きつけのバーで「アルコール抜きのカクテル」を頼む主人公の回想から始まります。オカルトライターとして生きる主人公が抱く、死者を視る力。それはかつて、孤独という殻の中にいた頃に、一人の「友達」と交わした切なくも温かい約束の証でした。
何より魅力的なのは、その時出会った【友達】の存在感です。彼は自分の孤独を「僕のものだ」と切り分け、相手を尊重する気高さを持っています。とある彼の言葉は、励ましを超え、読者の心にも深く突き刺さります。ここを読んで欲しい!!本当に胸に響く素晴らしい言葉なのです。
彼が別れの間際に残した「君だけのエッグノッグを作るんだよ」という願い。それは、人生の甘さも苦さもすべてを味わい尽くせという、最高の祝福に他なりません。
著者の筆致は、磨き上げられたグラスのように透き通り、耐熱グラスから立ち上る湯気のように優しい。
生と死が交差する瞬間が、恐怖ではなく「再会」という喜びとして描かれるラストシーンには、鼻の奥がツンとするような感動が込み上げます。
忙しない年末、また新たな年が始まる年始。
ふと立ち止まりたくなった時に読んでほしい一編です。読み終えた後、あなたの心には、スパイスの効いたエッグノッグのような、温かくて少しだけ刺激的な余韻が長く残り続けるはずです。
その人は、幽霊だったのだろう。
それは今までも沢山経験してきた事だ。
人には見えないモノが見えてしまう自分。
それを人に知られるのが怖くて、自ら
硬い殻の中へと心を閉じ込めたのだ。
エッグノックという飲み物を教えてくれた
その人は、卵の硬い殻をいとも容易く
割っては甘くて温かな飲み物に変えて
しまう。
それが生者であろうとなかろうと
主よ、人の望みよ 喜びよ。
讃美とは、無垢でいて只ひたすらに尊い
ものであり、そこに打算や奸計など決して
あり得ないもの。
死者を想う事の純粋さは、決して
特異な事などではない。
永遠の約束のもと、いつか真の朋友と又
合間見えん事を。