これはすごい。
「卵」のテーマでいろいろ読んできましたが……
現状一番惹きつけられました。
ページを捲る指が止まらない。
どうなってしまうんだろう?
こんなふうに熱中して物を読んだのは、久しぶりな気がいたします。
主人公は、「卵黄欠乏症」という病気を患っており、
本来赤子が産めません。
しかし、愛しい人との間に子供が欲しくなりました。
本来、与えられない物を欲しがってしまう。
そのような人間の欲望にはリスクがどうしてもつきものです。
最新科学によって、自分にも赤ちゃんが産める可能性が出てきたということでした。
しかし、それは、自らが人体実験のモルモットになることを意味します。
出産の孤独。
そして、経験者が誰もいないことへの不安。
さらに言えば、医学のために非検体となる動物への倫理。
色々なことを考えさせられるし、描写の一つ一つがとにかく
「リアル」なんです。
山本先生はおそらく男性なのですが、「本当か!? だとしたらすごいな!!」
と感心させられてしまいました。
これはすごいですよ!
ぜひ、ご一読を!!
すべての動物が卵から生まれる世界で、史上初めて妊娠・出産を経験する女性、満里奈の物語。
設定だけ見るとかなり突拍子もなく思えますが、描かれる日常や人間関係は驚くほど現実に近い。だからこそ満里奈は、妊娠特有の不調に振り回され、心身ともに疲弊します。
しかも、「世界初」で知識がないためか、夫はどこか他人事で、寄り添う気持ちが乏しい。でもこれ、妙に見覚えがあるんです。現実でも、妊娠や出産の大変さを理解しないまま、距離を取ってしまう男性は少なくないですよね。
作中では世界で初めての妊娠ですが、私たちの世界ではそれを当たり前の営みとして扱っています。けれど、本当にそれは「当たり前」なのでしょうか。命を宿し、命を産む行為には、痛みも危険もある。そのことを、現代人はあまりに軽視しているのではないでしょうか。
そんなことを考えさせられる作品でした。面白かったです。
おお、これぞSFだなあ、と設定がとても面白かったです。
この世界に住む人間(というか全ての哺乳類も)は全員が「卵を産むことで子孫を増やす」という体をしている。
そんな中で主人公である満里奈は「卵黄欠乏症」として卵を産めない。そのために子供は諦めるしかないと思っていた。
でも、諦めなくていいかもしれない。卵生が絶対となっているこの世界の中で、「子宮」なるものを体の中に移植することで、人間が直接胎内で子供を育てて産むことができるようになると伝えられる。
この感じがまさにSF。「大前提」となっている自然界の条件を別のところに置くことで、現在は「普通」となっていることを「特別」なものにシフトさせてみせる。
現実世界では「当たり前」になっている「子宮での出産」を全人類の中で初めて経験することになる満里奈。その心の動きが仔細に描かれていくことが本作の何よりもの魅力です。
「前例」がまったくないことのため、実験動物に近いような気分にも。その辺りの不安と葛藤がありありと伝わってきます。
SF的発想と、その後の細やかな心情描写。とても読み応えのある素敵な作品でした。