夜空に火焔の華その播種の如き芽吹きを見る。
- ★★★ Excellent!!!
自分は何処かおかしいのだろうか。
棒手振りも大工も岡っ引きや同心。そして
両親までもが皆、一つきりしか目玉が
なくて、もう一方は黒々とした深い竅が
穿たれている。
或る時、弟が生まれたが。その子は
自分と同じく両の目から涙を流して泣いて
いた。
いずれ、片方が抜け落ちて
しまうのか?
何故 は更なる好奇心に揺さぶられて
悪所を巡る。廓町の華やかな喧騒の、その
裏通りでは両の目が竅となった女郎が
粗末な茣蓙に座っては、愛想笑いを
浮かべていた。
底無しの暗い竅が、自分を見つめている。
大火に見舞われ、半鐘と火の粉が降り注ぐ
中に、焔炎に照らされた荒磯と菊柄の
振袖姿をした女性を見た時に。
そして、焼け野原に夜空を仰いだ時に。
漸くそれが理解できたのだ。
何故、皆の目が抜け落ちてしまうのか。
誰が何を見ているのか、そして
見られているのか。
何れ、この目も抜け落ちて
しまうのだろうか。