怪異の正体。それは、世に紛れながら今も。

東京とは言うものの、陸の孤島の如く
周囲の市町村とは隔たりのある、土地。
その土地に古くからある旧家で老夫婦が
何者かに殺害される。
 狗神を祀るという、その家には
得体の知れない祭壇があり無惨にも叩き
壊されていた。喰い荒らされた供物。
しかも、老夫婦の身体には幾つもの損傷。
鋭利な刃物などではなく、何ものか が
喰らい付き引き千切った傷跡があった。
 折しも、付近では飼い犬が失踪する
事件もあり、これはまさに

 狗神の呪いではないかと

   畏ろしい噂が人々の口に膾炙する。

殺人事件を調査すべく、警視庁から頗る
エリートが派遣されて来るのだが…。


兎に角、不穏な幕開けから棘ろおどろしい
お膳立てが見事に、それも鮮やかに
ホラーの領域を示唆するこの短編。しかし
あくまでも事実を丹念に調査する事で、
事件の真相を暴いて行く。

     そして、真相は。

確かに、これは怪異などではないのかも
知れない。けれども怪異とは、いつの世に
あっても存在し得る 深い闇 を
指すのかも知れない。