森羅万象に神の座すこと、努々忘れてはならぬ。
- ★★★ Excellent!!!
自然の中では、ヒトは矮小である。
取り分け、それを実感させてくれる北の
大地。針葉樹が天に向かいその刃の様な
樹影を深く濃くして行く
カムイモシリの森
その地では今でも全てが神であり又、畏怖
する対象である。梟も熊も鮭も海豹も。
全てが神として崇め讃えられていた。
嘗てそこではアイヌの人々が礼儀正しく
神々を祀りつつ暮らしてきたが、いつしか
様々な人々が入り乱れて
都市を創って来た。
それはまさに彼岸の際にまで。その傲慢な
勢力を伸ばして行った。
キムンカムイはいつしか
ウエンカムイと成らざるを得ず
母を喪う悲しみや怒り、そして苦しみは
カムイモシリの中だけでは決して
終わる事はない。
スタイリッシュで洒脱な作者の満を辞した
意欲的な作品。この問題提起に対して
我々は、どう応えて行けるのだろうか?
只、涙するだけでは済まされない。
何故ならばこれは、極めて個人的な最小
単位の意識の内側に存在するものだから。
多くの人々に読まれたい作品。
是非ともお手に取られる事を
心より願う。