英雄は現実に帰れない

魔王を倒し、異世界を救った――はずだった。

勇者として長い戦いを終えた主人公が目を覚ました場所は、凱旋の場ではなく現代日本の病室。
政府関係者から告げられたのは、あまりにも残酷な真実だった。

彼が「異世界転生」だと思っていた世界は、政府公認の極秘VR実験。
地球は未知の生命体の侵攻によって滅亡寸前にあり、その対抗策として“戦闘に適応した人間”を作り出す計画が進められていたのだ。

被験者は、事故や病で死の淵にあった人間たち。
英雄譚という物語を与えられ、仮想世界で極限の戦争を生き抜かされる。
その生存率は、わずか0.5％。

数百人の中で、現実に帰還できたのは主人公を含め数名のみ。
仲間との絆も、流した血も、すべては「実験の過程」だった。

英雄でも救世主でもない。
彼はただ、壊れなかっ…続きを読む