残酷で美しい世界に酔いしれてしまう

 なかなか解釈が難しい作品だ。
 作中に出てくるハナコドモやハナオトナなどの言葉はなんらかのメタファーや象徴であるように感じる。
 
 二十歳の主人公は裏山でモリカッパを探している時に誤ってハナコドモを食べてしまったという。
 それは美味しそうなにおいがするが食べてしまってはダメなものだったようだ。
 このままだと、母のように主人公はハナオトナになってしまうらしい。
 ハナオトナはハナコドモと違って、噎せ返るような甘ったるい蜜をだらだら垂れ流す存在だという。
 まるで未成熟な乙女が熟れた大人の女性になるような描写ではないか。
 また、ハナという言葉にどこか性的なにおいを嗅ぎとってしまうのは私だけだろうか?
 実際、幻想的な暗喩で巧妙に隠されているが、どこか性的な描写がこの作品には多い。

 子供はいずれ嫌でも大人になってしまうということだろう、様々な意味で。
 
 作中の描写はどこかグロテスクで、直視すると正直、気持ち悪さを感じてしまう。
 しかし、奇妙なことだが、同時に美しいとも思うのだ。
 そういうアンビバレンスな感情を常に抱かせてくる圧倒的な文章に私は酔いしれてしまった。
 あなたも是非、この美酒のような小説を読んで、心地よい酩酊状態に陥ってください。

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