物語の舞台はレシテというのどかな気候の島。
その島の古都プルシェでは一月後に王の息子の成人の儀式が行われるようだ。
島で有名ないくつかの舞踏団は、その儀式の際に、王や王子の前で舞を披露するらしい。
本作はその舞踏団の一つである『青海の紅玉』のメンバー、フィンとユアンとプロムを中心とした物語だ。
笛吹きの少年ユアン、亜麻色の髪の舞姫プロム、そしてかつて笛吹きだった少年フィン。
なぜフィンは笛を吹かなくなったのか?
フィンはひかりの森というところを探しているらしいが、それはいったいなんなのか……?
そのような疑問を抱かせながら、三人の友情や努力や葛藤が描かれていく、その人間ドラマが素晴らしい。
丁寧な文章で静かに感動を与えてくる、児童文学にありそうな物語でした。おすすめです!
冒頭、ひっそりと降りしきる雨。
石を打ちつける音、流れ落ちる赤い血。
顔の見えない描写が続きます。
何が起きているのか読めないまま、読者は物語の中へと誘われていきます――
情景はいっぺんに変わり、そこは音楽舞踏団の青空食堂。
「おーい! フィン! はやくスープ!」
「もうすぐ!」
みんなの食事の世話をする少年フィン。
笛吹きのユアン。
そして、舞の名手である少女プロム。
フィンはもともと笛の上手な少年でした。
腕を見込んだノエラ長老が楽団に招いたのです。
しかしフィンは、来る途中に乗っていた馬車の事故で手を負傷してしまい、二度と笛を吹けなくなっていました。
「ねえ、ひかりの森って知ってる?」
それは、馬車に乗り合わせた少年から聞いた話でした。
異国情緒あふれる音楽と舞で彩られたストーリーに、かすかなミステリーが風味付けされた美しい物語です。
さあ、あなたも参りましょう。
彼らの待つ古都プルシェへ。
ひかりの森、というものがあるそうです。
そこは、女神様が、誰でも幸せになれる場所を用意してくれている場所のことを指すそうです。
「彼」は、常にそこを探していました。『まだ何者でもない彼』は……。
冒頭は、血生臭いシーンから始まります。雨の中、大きな石で何かが何かを殴っています。
そいつの存在を、なんとか消し去るために。
とある城では、王子の成人の儀にさまざまな楽団が集まり、いわゆるフェスティバルが開かれるそうです。
フィンという少年がいる楽団も、それに参加するよう。
しかしフィンは雑用係。笛を吹きたいのに、雑用係。今日も肉体労働に従事します。
本当は実力があるのです。いや、笛を吹けばおそらく、楽団随一の腕を持っているのでしょう。そんな彼が笛を吹かない。いや、『吹けない』なぜか?
笛に合わせて踊るのは、『練習狂』の少女プロム。
彼女はまるで何かに追い詰められるように、ひたすら舞を練習します。その姿は悲壮感が漂うほどに。
さまざまな人間の、さまざまな思いをのせて、ショーの当日はやってきます。
ひかりの森 という場所があるそうです。
その森は、女神様が用意した、誰もが幸せになれる場所。
でも幸せってなんでしょう?
その言葉は漠然としすぎていて、
誰かの不幸のことであり、
望めばきりのない高い青空のことであり、
幸せとは、何を指すのか……少年少女は今でも森を彷徨うのです。
その場所を探して……。
ご一読を。
出てくるみんなが本当に健気で、切ない気持ちにさせられました。
主人公フィンは旅芸人の一座で働いている。「フィン」はかつて笛が上手だとされていたが、ある時に事故に遭ってからは笛を吹くことが不可能になっている。
そんな葛藤を覚える日々を送りつつ、同じ一座に属する舞手のプロムと一緒に過ごす時間を送る。
プロムがどうしてそんなに舞に力を入れるのか。誰かに見初められるのを目指しているのかとフィンはひねた想いにも囚われそうになる。
やがて、プロムの真意を知ってから、フィンは心を揺さぶられることに。
フィンもプロムも、旅芸人の一座という決して楽ではない生き方を続けている。この先も立身出世の機会なんてあるかどうかもわからないし、豊かでない状態は続くかもしれない。
それでも、「小さな何か」に必死に縋って希望を繋いでいこうとする。そんな姿が自然と胸を打ちます。
でも、「フィン」の抱える事情はもっと複雑なものも。
本編を一度読み終えてからまた冒頭に戻ってみると、何やら不穏な描写が入っていることに改めて気づきます。それで「何か」があったことを察することに。
この物語のあと、「フィン」とプロムの関係はどうなっていくのか。そして旅芸人一座の中での彼はどのような未来を迎えるのか。
必死に生きている彼らに、何かの希望があればいいな、と思わされました。