子供から大人になる不安。ここにしかない独特で耽美な世界観が衝撃です

 短い中でも「怪奇と幻想、そして耽美な世界」がこれでもかと濃縮されていました。

 主人公である私は、裏山で「ハナコドモ」を食べてしまったという。それは食べてはいけないものだった。

 二十歳になり、自分が「ハナコドモ」から「ハナオトナ」になってしまうのではないかと不安を感じるようになる。
 ハナオトナというのは「噎せ返るような甘ったるい蜜をだらだら垂れ流す」ような存在なのだという。

 自分とは別の生き物のように感じられる母。それに一種のおぞましさのようなものを感じながら過ごす。

 本作はなんといっても主人公たちが「なんらかの植物のような別種の生き物」の生態を持っているのが特徴です。
 異質な生き物が人間のように振る舞い、それでいて人間と同じように「大人になるにつれての体の変化」に悩むようなこともする。
 
 そういう怪奇な世界観。そして文章の端々から静かに、それでいて濃厚に滲み出るどこか性的な雰囲気。
 異形でありながら耽美でもある、ここにしかない独特な世界観が味わえる一作です。

 鮮烈にして濃厚に、「何か」が香ってくること請け合いです!