人生を変える一曲
- ★★★ Excellent!!!
無味乾燥な街から抜け出すべく歌手を目指した三十年前。
チャンスはめぐってくるものの、自分の力を過信しすぎてしまいました。
結局のところ夢はやぶれ、ただただ時間を過ごすばかり。
妻には頭が上がらず、息子とも心が通じない。
俺の人生、無駄だ。なんの意味もない。
あのワンステージさえモノにできていれば。
もうこうなったら、残りはただの消化試合。
鬱屈した毎日の中、一つの話がやってきます。
ピアノを弾いてくれないか、と。
聞けば聞くほど、三十年前の状況に酷似しています。
ピアニストに立場を変え、自分そっくりなヴォーカルを支えるという点以外は。
このステージ、なんとしても成功させたい。
あのヴォーカルには同じ思いをさせたくない。
彼の魂の再演がもたらすものは――――
しみじみとした読後感。
「意味」を考えてみるといいでしょう。