痛みと祈りが交錯する──現実と異界の境界を生きる物語
- ★★★ Excellent!!!
静かな日常の地平が
ふとした瞬間に裂け
現実と異界が
指先ほどの距離で重なり合う──
そんな〝境界の物語〟を読みたい人に
この作品は強く響くでしょう。
子どもの無垢な想像力が
実は世界を支える真実であり
大人の理性はかえって脆く
痛みに晒されやすい。
東名を駆ける一台のバイク
家族を失った職人の夢
震災の残響
そして
時空を越えるために払われる代償──
それらは散逸した断片ではなく
ひとつの〝祈り〟のように
静かに繋がり出す。
日常の手触りと
胸を抉るような現実の痛み。
そして、容赦なく訪れる超常の気配。
そのどれもが嘘ではなく
本当にこの世界に在るのだと思わせる筆致に
胸を掴まれます。
華やかな冒険譚ではない。
これは
失われたものを抱えた人々が
それでも誰かを救おうと歩き続ける物語──
読み終える頃には
きっと世界の色が少し変わって見えでしょう。