花びんのチューリップが照らす──少女未満の嫉妬と優しさ
- ★★★ Excellent!!!
花びんの中で
少しずつ色を失っていくチューリップと
少女たちの距離感が
そっと呼応する物語。
「先に見つけたのは、わたしなのに」――
そんな言葉にならないざらつきが
教室のざわめきや放課後の約束の合間から
静かに胸に滲んでくる。
男子とばかり遊ぶ〝わたし〟と
花を放っておけない由衣ちゃん
そして花を持ってきたエリナちゃん。
たった三人と一つの花びんだけで
〝少女未満〟の心の温度差や
親友という言葉の居心地の悪さが
驚くほど鮮明に立ち上がってくるのが
印象的でした。
優しいのに少し残酷で
淡い色合いなのに
どこか血の気を感じる一編。
あのとき教室の片隅で覚えた
小さな嫉妬と名付けられない寂しさを
そっと思い出させてくれる作品です。