花びんのチューリップが照らす──少女未満の嫉妬と優しさ

花びんの中で
少しずつ色を失っていくチューリップと

少女たちの距離感が
そっと呼応する物語。

「先に見つけたのは、わたしなのに」――

そんな言葉にならないざらつきが
教室のざわめきや放課後の約束の合間から
静かに胸に滲んでくる。

男子とばかり遊ぶ〝わたし〟と
花を放っておけない由衣ちゃん

そして花を持ってきたエリナちゃん。

たった三人と一つの花びんだけで
〝少女未満〟の心の温度差や
親友という言葉の居心地の悪さが
驚くほど鮮明に立ち上がってくるのが
印象的でした。

優しいのに少し残酷で
淡い色合いなのに
どこか血の気を感じる一編。

あのとき教室の片隅で覚えた
小さな嫉妬と名付けられない寂しさを
そっと思い出させてくれる作品です。

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