女子の〝フツウ〟に戸惑う少女が一歩踏み出す──友情の物語

「ひいきじゃない?」

教室にしみついた、目に見えない温度差と
女子グループの空気の重さ。

わたしの視線は
その〝なんとなく〟の居心地悪さを
痛いほど正確にすくい上げていきます。

オーディション
先生の指名
噂話──

誰もはっきり悪者じゃないのに
少しずつずれていく
〝フツウ〟と〝チガウ〟の境界線。

その中で、わたしの鈍さと優しさが
読んでいて小さな救いとして胸に残ります。

保健室
絵本
カレーの匂い。

すべてが、ささやかな日常のワンシーンなのに
子どもたちの世界では

友情の始まりにも
終わりにもなりうる分岐点──

〝フツウの女の子〟になれない苦さと
それでも誰かを知ろうと一歩踏み出す勇気が

静かに
あたたかく胸を満たす一編です。

その他のおすすめレビュー

佐倉井 鱓さんの他のおすすめレビュー151