少女未満の心とからだが〝赤い一瞬〟で塗り替わる物語
- ★★★ Excellent!!!
二月の冷たい風と
福原小の
〝カエル・ジャージ〟が揺れる教室で進むのは
まだ〝少女未満〟の子どもたちの
からだとこころが変わっていく
一瞬を切り取った物語。
タイトルの強烈さとは裏腹に
描かれているのは
雷注意報でつぶれた体育
くだらない言い合い
保健室へ続く廊下の心細さといった
誰もが覚えているはずの放課後の手ざわり。
そこへ、ある〝赤い出来事〟が落ちてきて
世界の色がそっと塗り替えられていく──
早苗のまなざしは
「女子ってめんどう」
という毒舌まじりの諦めと
親友、由衣への言葉にできない
愛しさのあいだで揺れ続けます。
その感情は〝友情〟と呼ぶには濃すぎて
〝恋〟と呼ぶにはまだ幼い。
そのちぐはぐさを
アマガエル学級の鮮やかな緑が
滑稽さと神々しさを同時にまとって
象徴しているのが見事です!
緑の体操服が羽のようにひらりと舞う場面は
胸の奥をじんと熱くする名シーン!
生理
ジェンダー
〝ふつう〟の恋愛から
こぼれ落ちてしまう自分──
重くなりがちなテーマを
軽妙な会話とユーモアでくるみながら
それでも最後には
静かな祈りのような余韻と
刺すような孤独をそっと残して終わります。
かつて〝自分だけが違う〟と
感じたことのあるすべての人に刺さる
小さくて痛くて、美しい一編です。