少女未満の心とからだが〝赤い一瞬〟で塗り替わる物語

二月の冷たい風と
福原小の
〝カエル・ジャージ〟が揺れる教室で進むのは

まだ〝少女未満〟の子どもたちの
からだとこころが変わっていく
一瞬を切り取った物語。

タイトルの強烈さとは裏腹に
描かれているのは

雷注意報でつぶれた体育
くだらない言い合い
保健室へ続く廊下の心細さといった
誰もが覚えているはずの放課後の手ざわり。

そこへ、ある〝赤い出来事〟が落ちてきて
世界の色がそっと塗り替えられていく──

早苗のまなざしは
「女子ってめんどう」
という毒舌まじりの諦めと

親友、由衣への言葉にできない
愛しさのあいだで揺れ続けます。

その感情は〝友情〟と呼ぶには濃すぎて
〝恋〟と呼ぶにはまだ幼い。

そのちぐはぐさを
アマガエル学級の鮮やかな緑が
滑稽さと神々しさを同時にまとって
象徴しているのが見事です!

緑の体操服が羽のようにひらりと舞う場面は
胸の奥をじんと熱くする名シーン!

生理
ジェンダー

〝ふつう〟の恋愛から
こぼれ落ちてしまう自分──

重くなりがちなテーマを
軽妙な会話とユーモアでくるみながら

それでも最後には
静かな祈りのような余韻と
刺すような孤独をそっと残して終わります。

かつて〝自分だけが違う〟と
感じたことのあるすべての人に刺さる
小さくて痛くて、美しい一編です。

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