「 壊された人生を、それでも生き直そうとする人間の記録だ」
- ★★★ Excellent!!!
15話まで読み進めたうえでのレビューです。
この作品は、序盤の印象だけでは決して測れない物語だと感じました。
この作品を読んでいて強く感じるのは、
「優しさ」を安売りしていない、という一点です。
誰かが突然すべてを救ってくれる話ではない。
正義が一瞬で勝つ話でもない。
むしろ、読んでいて苦しい場面のほうが圧倒的に多い。
それでも読み進めてしまうのは、
登場人物たちが「間違えながらも、人として誠実であろうとする」からだと思います。
この第15話付近に至るまで、
読者は何度も「これは耐えられるのか?」と試されます。
感情を消費させるための不幸ではなく、
社会・家庭・大人の無責任さが積み重なった結果としての痛みが、淡々と描かれているからです。
だからこそ、この話数で描かれる空気は特別です。
派手な出来事がなくても、
たった一つの視線、言葉、沈黙が、これまでの重みをすべて背負っている。
読後に残るのは、涙よりもむしろ「静かな肯定」でした。
――それでも、人はやり直していいのだと。
この作品は、
「かわいそうだったね」で終わる物語ではありません。
そして、読む側にも簡単な共感を許してくれません。
だからこそ刺さる。
だからこそ、忘れられない。
もし途中で読むのがつらくなって止まっている人がいるなら、
ぜひこのあたりまで辿り着いてほしい。
ここまで読んできた時間が、決して無駄じゃなかったと、静かに証明してくれる回だと思います。