震災と異能バトル。この凄まじい温度差が、読む者の心を揺さぶる。

一見すると、小学4年生の元気な戦闘巫女・剣奈ちゃんと、個性豊かな妖(九尾の狐や白龍!)たちが織りなす現代異能ファンタジーです。キャラクターたちの会話は軽快で、クスリと笑える楽しさに満ちています 。




しかし、物語のレイヤーが一枚めくられると、そこには息を呑むほど「リアル」な絶望が広がっています。 描かれるのは、1995年の阪神・淡路大震災。神戸市長田区、ゴムと油の匂いが染み付いた町工場で、一人の真面目な職人が夢を砕かれ、転落していく様が、痛みを感じるほどの解像度で描写されます 。


「篠の道」という、激痛を伴う時空移動。その先にあるのは、単なる敵ではなく、過去という名の変えられない現実なのかもしれません 。 ポップなキャラクターたちが、この重厚な「喪失」の物語にどう立ち向かい、どう「救済」を成し遂げるのか。 「ただのラノベ」と思って読むと火傷する、魂のこもった社会派ファンタジーです。

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