15 カスのリーダーは信頼の証
――爆音と白煙が去り、
脳裏に
――また戻ってくるよ。君に殺される為にね。
あれは
それを確かめるためだけに彼女はここまで来たのだ。銀の弾丸を詰めたハンドガンを握り、人々を守ろうと命を懸けて
(……よくわかったわ。あなたが本物のバカだったってこと――)
ビアンカは飲食店の前でアラミスに暴行を加えた恥知らずな3人組を開放すると、
建物の天井は吹き飛び、集会所としての面影はもうない。白装束達はとっくに去り、残っていたのはヒースの前に立つサイモンとヨハンだけだった。
――これだけは伝えなければ……胸の奥で、何かが音を立てて崩れていた。その目は「
「ヒース! やったな!」
ミツヤは走り寄るなり、ヒースが
「ヒースの
ジェシカの悲鳴が飛ぶ。ヒースの服は爆発で吹き飛び、
「てめぇ、レディーの前でいい加減にしろッ!」
「何だよ、しゃぁねえだろう。あの爆発の
すっかり緊張感が消え、空気が緩んだ彼らの中へ、ビアンカはゆっくりと歩み出た。
「――ビアンカちゃん。いいぜ。表に出よう」
アラミスはビアンカが来ていることを知っていた。あの約束を果たそうとでもいうのか、ビアンカへにっこり微笑みかける。
「何よ? どういうこと?」
ジェシカはまだ知らない。ビアンカが商人の娘などではないこと、そしてアラミスと何の約束があるのかを。
「アラミスっ! ビアンカさんに手を出したらあたしが許さないわよ!」
ジェシカの真っすぐな水色の瞳にビアンカはフッと笑って向き直った。
「ジェシカさん。ごめんなさい。いえ、アラミス、『
薄々気づいていたミツヤも、意味の分からない表情をしたヒースとジェシカも、一斉に
「私がアラミスから奪ったもの――お返しするわ」
彼女は護衛隊特殊部隊の認証バッジを
「ですが私にも任務があるの。これ以上の話はできない。でも――もう二度とあなた達の前には現れないと約束するわ」
「ビアンカちゃん……!」
アラミスが一歩、前へ出た。
「皆さん最後にひとつ、いいかしら」
ビアンカはふっと視線を落とした。これまで共に行動した時間をなぞるように、ほんの数秒、沈黙が流れる。
「
不意の言葉に、場の空気が張りつめる中、ビアンカは1人ずつ視線を巡らせた。
「――ミツヤ。あなたのように慎重かつ常識的な判断が出来るわけでもなく」
次にジェシカへ向き直る。
「ジェシカ。あなたのように常に周りを見ているわけでもない」
そしてアラミスを真っすぐ見る。
「ましてやアラミス。あなたのように頭がキレるわけでもない」
ここまでの話を聞きながら、ミツヤ、ジェシカ、アラミスの3人は口元を緩ませニヤニヤしていたが、ヒースの表情だけが次第に曇っていく。
「私が見ていただけでも勝手な行動をして周囲に迷惑をかけ、挙げ句の果て仲間を危険に
次々と並べたてられるヒースのマイナス面に、当の本人の表情は険しくなり始めた。
「――でも、私の方が間違ってたのね」
その言葉を待っていたかのようにミツヤ、ジェシカ、アラミスの3人が同時に、迷いなく声を重ねる。
「カスのリーダーだからついていくんだ!」
ヒースは言葉を失った。意味がわからない、という顔のまま固まる。そのヒースの不満そうな顔を見たミツヤが補足するように真剣な目で付け加えた。
「騙されやすいからな。危なっかしくて放っとけないだろ?」
更に、ジェシカが口を尖らせ君で続ける。
「何だかんだで、いっぱい助けてもらってるからね」
ヒースは何となくむずがゆい気がして鼻の下を指でこする――だが、最後にアラミスの放った一言がヒースをブチ切らせてしまう。
「放置しとくと世の人のためにならねぇからな」
間髪入れず、ヒースがアラミスの胸倉をつかんだ。
「なんだとテメェ!」
「ミッチー止めて。公衆の面前で恥ずかしい」
冷静なジェシカの声と同時に、ミツヤが慌てて2人の間に割って入った。
「やめろよ、お前らなんでいつもこうなんだよ」
その光景をビアンカは黙って見つめていたが、彼女の胸に熱い
(私は――ついていくリーダーを間違えたようね……)
彼女は一礼すると、その後は振り返りもせず足早に街の外れへ向かって去っていったのだった――。
◆
ほどなくして、爆音を聞きつけた衛兵たちが駆けつけてきた。200人以上を収容できるはずのEIA集会ホールは、屋根を失い、瓦礫同然の有様となっている。どうやったらこんなに粉々になるのか。
「ちょっと待ってくれないか」
声を上げたのはヒースだった。
左手には炎斬刀の
「何だね!?」
「こいつら2人をどうすんだ? まさか死罪ってことはねぇよな?」
それを聞いた衛兵の一人が眉を寄せて問いただす。
「死罪の他に何があるっていうんだ? この2体は
「あー、ちょっと違う。このホールをぶっ壊したのは俺とミッチーだ、そこは悪かった。あと――殺したのは総裁一人だけだぜ」
衛兵とヒースの会話に、薄く笑いながらアラミスが割り込み、ヒースとミツヤを指さして訂正する。
「まぁ人数の問題じゃない、殺したことに変わりはないからな。怪我人は38名だ。コイツら2人と俺を入れてね」
まるで
「こいつら、
***《次回予告》***
ヒース:ミッチー、俺の服どうしよう……。あの黒いコート気に入ってたのに。
ジェシカ:ああ、それなら替えが馬車にあるわよ。クロード総隊長が、
ヒース:何!? ビークロが? なんで最初に言わねぇんだよ!
ジェシカ:そんな事したら安心して燃やしまくるから黙ってろって言われたの。まさか全裸同然になるとは思いもよらなかったけど。
ミツヤ:よかったなヒース。ほら、馬車までその白装束でも被ってろ、風邪ひくぞ。
ヨハン:サイモン殿おぉぉぉぉ! どこへ行かれたのですか!? あ! サイモン殿、こんなところに!
ヒース:ちげぇ! 俺はヒースだ!
ヨハン:ひぃぃ――ッ!
サイモン:……次回第16話、「次は僕の番だ」。ヨハン、私はこっちだ。スーパーで親を間違える子供か。
青い疾風(ブルーゲイル)! ~蒼炎(そうえん)の断界編~ 島村 翔 @Alamis
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