事故物件に住むズボラ女子大生・想子と、彼女に仕える人語を解す巨大蜘蛛・九縄。この一人と一匹の奇妙な共同生活が本作の大きな魅力です。
凄惨な怪異が襲い来るダークな世界観でありながら、二人の生活感たっぷりのコミカルなやり取りが絶妙なスパイスになっています。圧倒的な力を持つ恐ろしい大蜘蛛が、想子に呆れながら家事を手伝う姿は非常にユーモラスに描かれています。
「千年の盟約」という重い宿命の影と、目前の「部屋の片付け」や「金欠」という等身大の日常のギャップが秀逸です。太刀塚家の因縁と二人の関係が今後どう変化していくのか、読者の期待を強く惹きつける作品です。
巨大蜘蛛と女子大生の同居譚は、「終わりが確定している日常を、どうやって今日まで運ぶか」の物語。
冒頭の異物感は強烈なのに、読んで残るのは恐怖より生活の匂い。
毒舌、説教、容赦ないツッコミ。千年モノの怪物がやっているのは、掃除機を操り、紙屑を分け、段取りを整え、言葉で人間を立たせること。
可笑しいのに、ふと気づく。この生活の手入れそのものが、守護の形式なんだと。
想子のだらしなさも、ただの怠惰じゃない。達観と諦めの底で、それでも今日を続けてしまう。その姿が九縄の千年の重さと釣り合って見える瞬間があり、胸を掴まれました。
八本の脚で囲まれた檻——守られて、出られない。
優しさと束縛が同じ形をしているから、笑っていた場面で静かに背筋が冷える。
日常がそのまま怪談に反転する瞬間が巧い、唯一無二のバディものです。
家賃一万円。
物価高な今日この頃では大変魅力的ですがお約束通りの事故物件を契約し、ちゃっちゃっと問題を解決するところから話は始まります。
そして披露されるちょっとポンコツ気味の女子大生・想子のユルい生活と、守護である蜘蛛・九縄のセンスありまくりなお説教と皮肉と突っ込みと返し。
思わず座布団をあげたくなる、言語センスの楽しい人外バディものになります。
バディ契約がいつ切れるか明確ではなく、九縄の物騒な強さが自分への刃になるかも知れないという緊張感を孕みつつも、
類が友を呼ぶのか、面白おかしい個性的な知り合いが増えていきます。
笹田さんがお気に入りです。癒されます。
のんびり楽しく読める作品だと思います。
代々憑き物筋として繁栄を享受してきた当代の主人公が、契約相手であるクモと様々な問題を解決していく現代ファンタジー作品です。
主人公は強力なクモの妖怪と契約を結んだ女子大学生。
けれど、みだりに力を振るうつもりは無く、むしろ怠惰な欲望のままに一日を無為に過ごしています。
彼女の家が代々家業としてきたのは、クモを用いたあらゆる意味で表に出せない仕事。
しかし、主人公は家業に嫌気がさしており、仕事を行わないせいでいつも金欠です。
怠惰の中で憂うのは、迫りつつあるクモとの契約期限。
終わりはクモの豹変を招くのか、それとも穏当な更新に終わるのか。
手の平が届く範囲しか救わない霊能者とクモの物語。
ぜひ読んでみてください。
汚部屋に住む女子大生・太刀塚想子。だらしない彼女の最大の秘密は、天井に張り付く巨大蜘蛛・九縄と暮らしていること。
古くから妖怪を従えてきた太刀塚家。九縄は1000年前、初代に敗れて以来、代々の当主に仕える土蜘蛛の大妖怪だ。一瞬で獣を八つ裂きにする絶対的な力を持ちながら、今は想子の掃除機を操り、迷い猫探しに付き合い、クリスマスに紙吹雪をかけられている。
「今年も一人だったな」
無慈悲な九縄の一言に絶望する想子。だが、そんな日常のやり取りの裏で、運命の時計は確実に動いている。
千年の契約は、もうすぐ終わる。その時、想子は? 九縄は?
檻の内と外、どちらが本当の自由なのか――
日常系×妖怪伝奇。笑って、切なくて、目が離せない物語。