書けない人間と、書けすぎる相手

  • ★★★ Excellent!!!

話題のAI小説ブームを横目に見ながら、書けなくなった人間が立ち止まっている空気が、冒頭からじわっと伝わってきます。文章は軽快で読みやすいのに、どこか自嘲気味で、笑いと焦りが同時に残る読み心地でした。
特に面白かったのは、AIが生み出す“それっぽさ”に感心しながらも、ほんの小さな違和感に引っかかる瞬間です。完璧そうに見えるものほど、少しのズレが際立つ。そのズレを前にした語り手の反応が、とても等身大で共感できます。
また、AI側の返答が単なる道具ではなく、会話として噛み合い始めるところで、物語の温度が一段変わったように感じました。ここから先は「AIがすごい話」ではなく、「書く側が何を求め、どう関わるか」の話になっていきそうで、静かな期待が残ります。
気負わず読めるのに、読み終わったあと少し考えさせられる。そんな余韻のある一篇でした。

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