想いが運命を動かす——静かに心を震わせる幻想譚

『繋がるさきのゆめ』は、読めば読むほど心が静かに揺れていく、とても美しい物語です。

導入からもう惹き込まれました。
迷子の少女・翠と、手を差し伸べる少年・玲。あの一瞬の出会いが、温かさと切なさを含んだ長い物語の起点になっている……その構図がまず見事です。

本作の魅力は、人物たちの想いの強さが丁寧に描かれていることだと思います。女神として祈りに生きることを強いられた翠、変わりゆく彼女の立場に寄り添いながらも距離を置くしかない玲、そして若くして国を背負う皇帝・槐。それぞれが誰かを大事に思うがゆえに選ぶ行動をしていて、どの感情もとても純粋で苦しくて、美しいんです。

物語の後半は特に圧巻で、胸が締めつけられる瞬間が何度も訪れます。
けれど悲壮さではなく、人の想いがどれほど強く、互いを動かす力になるのかを感じさせてくれる優しい切なさが漂っていて、読後感はとても温かいです。

ファンタジーとしての世界観も緻密で良質ですが、それ以上に、人と人がどう繋がり、どう別れ、どう前に進むのかという普遍的なテーマが物語の芯にあります。

静かな美しさと深い余韻を求める方には、ぜひ読んでほしい一作です!

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