静かな夜がそっと寄り添う、もう一つのクリスマス物語
- ★★★ Excellent!!!
『クリスマス・キャロルは流れない』は、きらびやかな季節に取り残されるような孤独と、その奥にある小さな温度を丁寧に描いた物語です。
主人公の「与えること・受け取ることが苦手」という感覚がとてもリアルで、読んでいる側まで胸の奥を静かに押されるような痛みがあります。
でも、その痛みを過剰にドラマタイズしない筆致がむしろ魅力で、淡々とした語り口が逆に響きます。
特に、誰にも期待しないように生きてきた主人公の生活の一角に、自然体で寄り添う同居人がいるという関係性が、ほどよい距離感の温かさを生んでいて、とても心地よかったです。
派手な展開はなくても、その静けさこそが本作の良さ。
読む人の心のどこかに確実に触れてくる、そんな作品だと思います。
華やかなクリスマスの物語に少し疲れたとき、そっと寄り添ってくれる一冊としてオススメです!