笑いに手を伸ばす、その一歩の噺

狩りが苦手なのに「失敗したことがない」と言い切る男……この出だしだけでニヤリです。

村長との掛け合い、森の擬音、短い間がきれいで、頭の中に高座が立ち上がります。

凍てついた森の冷えと、男の強がりの温度差が効いてきて、枝の音にビクッとするたびこちらも肩が上がるのに、次の一行でスッと笑ってしまいます。
矢の「カーン!」の響きもお見事で。

さらに「失敗したことがない」という言葉のズルさと切なさ……挑戦しないから失敗もしない、でも未知へ踏み出すにはその一歩が要る。そんな含みまで、軽い口調でさらっと残してくれます。

オチは“未知”に絡めた言葉遊びで、爆笑というより「ふっと息が抜ける」心地よさでした。

大切な人を失った日々の中でも、笑いに手を伸ばし続ける姿勢が作品の芯になっていて、読後に小さな勇気が残ります。

面白くなくていい、でも一歩だけ。そんな優しい一席。
次の小噺も、こっそり楽しみにしています!

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