どうしようもない「歴史」と「運命」。そこには「癒し」の力も届かないのか
- ★★★ Excellent!!!
悲しくも切ない。それでもこれが「歴史」であり「運命」というものなのかも、と思わされました。
サーシャには人の傷を癒す「聖女」としての力が備わっていた。それを見初められ、帝位継承者であるミハイルという少年の傍にいられることになる。
病に駆られているミハイル。彼の病気はサーシャの力でも完全には治すことまでは出来ず、症状をやわらげることのみ。
いつかはミハイルを元気にしたいと願うサーシャだったが、彼女たちを取り巻く環境には「聖女」の入り込む隙すらないほどの「病理」が迫っていて……。
ミハイルやサーシャ。二人の名前がどことなく東欧系の響きを持っていたことで、これは20世紀前半の「ロシア革命」をベースにしたものなのかな、と想像させられました。
皇帝一家がそこで断絶され、幼かった子供たちまで命を奪われる。
皇女アナスタシアだけは難を逃れて生き残ったなんて伝説もあるけれど、果たしてミハイルの迎える結末はどうなるか。
ラストでサーシャが「その後の顛末」を語る場面。そこには「救い」を見出すこともできるけれど、やはりとても悲しい。サーシャはきっと激しい悲しみに暮れながら、それでもそれを肯定できるように何度も物事を噛みしめてきたに違いない。
時代の転機というか歴史の波に翻弄された二人の物語。この激しさや切実さを感じるラスト、強烈に心に響きました。