「手」を通してやり取りする「小さな日常」。それはいつまで続けられるのか

 子供の目を通して見る世界、というのがまた悲しさを醸し出します。

 主人公の少年は、聾啞者である母と対話するために「手話」を覚えている。
 その日もいつも通りに手話でのコミュニケーションをして別れるが、なぜか母が家に戻らない状態が続く。

 やがて警察が家に来て、あっという間に「日常」が終わりを告げることに。

 それでも、少年があくまでもそれを「悲しい」と思うことはない。少年の目には、いつまでも「変わらない日常」が続いているように感じられる。

 自分にとっての一番のコミュニケーションの道具となっていた「母の手」が目の前にあり、それを通して気持ちが伝わる感じがある。

 だから、何も変わっていない。

 そう思おうとする主人公の気持ちがとても悲しくて、「小さな日常」がこれから一体いつまで続くのだろうと、切ない気持ちにさせられました。

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