雨の日に差された傘。それは誰かの心を救ってあげられる、確かな優しさ

 「雨の日だからこその温かさ」があるということ。改めて思い出させられる感じがしました。

 主人公の少女きりえは、幼い頃に両親が離婚することになり、一人ぼっちで悲しんでいた。そんな雨の日に一人の少年が現れ、悲しむ彼女のことを傘に入れてくれた。

 彼に恋心を抱くようになり、数年後に転校生として同じ学校に入ってきたのと再会する。しかし彼は昔とは違っていて、誰とも打ち解けない性格になっていて……。

 優しさを向けられたこと。それで心を救われたこと。
 そんな風に「大切な何かを貰ったこと」が雨の日の記憶としてあたたかなものとして描き出されている。
 それをずっと大事にし、恋心を抱いていた少年のことを気遣うようになる。

 雨は冷たくて、塞ぎこみやすいものだから。そんな中で落ち込んでいる人はとてもわかりやすい。
 だからこそ、そんな誰かを助けてあげたいと思える。そういう「優しさ」が見えやすくなる時だとも言えます。

 誰かの心を根本的に救うのには、大変な労力がいるのかもしれない。それでも、「一人じゃない」ってことを伝えてあげるためには、ほんのちょっとの気持ちがあれば出来るのかもしれない。

 雨の日の「傘」というのは、そんなあたたかさを持ったものなのかもしれない。そういう事実なんかもありありと考えさせられて、とても健やかな気分になれる作品でした。

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