ただ、美しい絵を描きたかっただけなのに

 不条理。その果ての更なる不条理。
 絶望感の先にある「破滅以上の破滅」みたいなものがあって、逆にそれが「美」にすら感じられました。

 主人公は画家の女性。その絵はこれまで評価されていたはずだったのに、「父」のせいで全てが台無しに。
 父が新興宗教の教祖として、多くの人間を虐殺する事件が起こる。

 それに伴い、彼女がこれまで描いてきた絵の数々も、そんな事件を象徴したものだったかのように解釈される。
 彼女だって父親の被害者だった。だが、世の中の誰も「真実」なんかには興味を持とうとしない。

 歪められ、貶められ、そして迫害される。そんな重圧の中で彼女が見たものは……。

 破滅もあまりにも酷くなると、その深すぎる絶望感が「解放」や「救い」に思えることがあるのかもしれない。
 そういう現実の「深淵」を描き出したような、とても鮮烈な物語です。