概要
その炎は、守りか――灯火の竜の記憶か。
――雪深い大陸、イース。
山岳交易路で〈背運び〉をして生きる少年・リセルは、
誰とも関わらないと決めていた。
関わらなければ、また何かを奪われることもない。
ただ、かつて交わした約束だけを胸に。
そんな彼の前に、
雪の中で倒れていた少女が現れる。
少女は追われていた。
そして、リセルの中にもまた、恐れられる「炎」が眠っていた。
この出会いが、すべての始まりだった。
――これは、英雄譚ではない。
喪失の先で、それでも手を伸ばしてしまった人間の物語。
最初から、答えはそこにあった。
――喪失の先で、それでも灯を探し続ける物語。
※一章〜四章(出立編)完
※後半・誓い編 連
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!巡り逢った少年と少女。運命は残酷。だが二人はその胸に宿る灯火を信じる!
2026/6/27時点でのレビューになります。
もう誰にも関わらず生きて行くと決めていた少年、リセル。
名前と人生を奪われていた少女、エリシア。
特殊な力をもつ民の末裔である二人は、それぞれが過酷な運命の中で生きていた。
特にエリシアには、特殊な立場と肩書があり、権力者たちの思惑が彼女を取り巻く。
そんな二人の逃避行は、いつの間にかかけがえのない日々になっていた。
美しく冷たい世界の中で、リセルとエリシアが「自由」を求める物語です。
物語が進むにつれて二人が出会ったことは、運命だったと思いました。
逃亡生活の中で、お互いを思いやるようになっていく二人。
様々な出会いと別れ。
そして、エ…続きを読む - ★★★ Excellent!!!孤独と喪失の先にある希望の逃避行
深い孤独を抱える少年リセルと少女エリシアによる物語は、雪深い大陸を舞台に丁寧に立ち上がっていきます。
丁寧な描写から寒々しさが伝わってきて、雪深さに匹敵するほどの孤独を抱えるリセルの心情とかさなっていく感覚がありました。
追う者と逃げる者という設定はそれだけで緊張感があり、読み進めながら一緒に逃げている感覚になれるのですから、作者様の演出の巧さが光ります。
選び抜かれた美しい筆致による食事のシーンはあたたかく、焚き火の熱が届いてくる。
時に謎が生まれ、伝説が持ち上がり、その中でリセルとエリシアは互いの存在を意識し合う。
章ごとに空気感が違うので、物語の様々な顔を楽しめる構成も魅力で…続きを読む - ★★★ Excellent!!!降り積もる雪を静かに眺めるような、寂しくも温かい読書体験。
「俺は、もう誰とも関わらない」
そう決めていた少年の凍った心を溶かしたのは、無意識に自分の服の裾を掴んだ少女の、震える指先でした。
主人公リセルとエリシアの二人がお互いを思いやり、少しずつ歩幅を合わせていく姿はとても尊く、不器用な優しさに読んでいて温かい気持ちになります。
特筆すべきは、その「質感」の描写です。
私は物語全体を包み込む「ブルーフィルターがかかったような質感」の美しさに、深く感じ入りました。
肩に食い込む荷の重さ、泥水の冷たさ、そして焚き火が爆ぜる音。
厳しい自然の中で生きる人々の息遣いが丁寧に描かれているからこそ、二人が分け合うわずかな火の温もりが、読者の心にもじわりと…続きを読む