忘れていた心の靴底を、そっと貼り直してくれる物語。
- ★★★ Excellent!!!
読み終えたあと、冬の冷たい空気の中で大きく深呼吸したような、すっきりした気持ちになりました。
リストラに家族の離散、そして還暦目前――主人公・恒一の状況はかなり重たいはずなのに、不思議と読後は前を向ける感覚が残ります。
駅前のロータリーで、宝くじを握りしめる恒一の姿はとても現実的で、もしかしたら自分もと思ってしまう瞬間でした。
だからこそ、七億円ではなく末等三百円という結末が、この物語を一段深くしていると思います。奇跡にすがらず、まだ終わってないと自分で認めて、汗をかく道を選んだ恒一が本当に格好いい。
真実一路モーターズでの洗車シーンは、心まで洗い流されていくようで、読んでいてじんわり熱くなりました。魔法みたいな古本屋は消えてしまっても、彼の中に残った誠実さは消えない――そこがとても好きです。
人生がちょっと寒く感じるときに、そっと寄り添ってくれる一冊で、また一歩、歩いてみようかなと思わせてくれる、優しい再生の物語でした。