異世界転生を、送り出す側から描いた良作
- ★★★ Excellent!!!
「異世界転生」というテーマを、受け入れ側ではなく、送り出す側の「役所仕事」として描いている切り口が非常にユニークでした。
数値を重んじる冷徹な報告書のやり取りが続く一方で、最後の一文でモカの幸せが示唆されるという、対比の効いた構成が見事です。
主人公はあくまで「仕事」として淡々と処理していますが、結果として誰も不幸にならない解決策を提示しており、読後感は非常に爽やかで「抵抗率」というシステム的な障害を逆手に取り、スライムへの転生という「転生モノの王道」へ繋げる着地も鮮やかでした。モカの笑顔の写真が変わる描写には、多くを語らない美学を感じます。
短編ながら、一つの世界の歯車が回る様子を綺麗に描き切った良作だと思いました。