人生の甘さ苦さを飲み干して。エッグノッグが繋ぐ、冬の再会。
- ★★★ Excellent!!!
冬の静謐な空気と、一杯の「エッグノッグ」が紡ぎ出す、至高の短編ミステリアス・ファンタジーです。
物語は、行きつけのバーで「アルコール抜きのカクテル」を頼む主人公の回想から始まります。オカルトライターとして生きる主人公が抱く、死者を視る力。それはかつて、孤独という殻の中にいた頃に、一人の「友達」と交わした切なくも温かい約束の証でした。
何より魅力的なのは、その時出会った【友達】の存在感です。彼は自分の孤独を「僕のものだ」と切り分け、相手を尊重する気高さを持っています。とある彼の言葉は、励ましを超え、読者の心にも深く突き刺さります。ここを読んで欲しい!!本当に胸に響く素晴らしい言葉なのです。
彼が別れの間際に残した「君だけのエッグノッグを作るんだよ」という願い。それは、人生の甘さも苦さもすべてを味わい尽くせという、最高の祝福に他なりません。
著者の筆致は、磨き上げられたグラスのように透き通り、耐熱グラスから立ち上る湯気のように優しい。
生と死が交差する瞬間が、恐怖ではなく「再会」という喜びとして描かれるラストシーンには、鼻の奥がツンとするような感動が込み上げます。
忙しない年末、また新たな年が始まる年始。
ふと立ち止まりたくなった時に読んでほしい一編です。読み終えた後、あなたの心には、スパイスの効いたエッグノッグのような、温かくて少しだけ刺激的な余韻が長く残り続けるはずです。